踵骨骨折は足首を捻る事で発生(踵骨前方突起骨折)したり、高い所からの落下やアキレス腱の牽引により発生する骨折です。
骨折発生時は骨片転位が発生する事が多く、骨折のタイプによっては、徒手整復(骨のずれを戻す操作)をきちんと行わないと、後遺症として変形や痛みが残る場合があります。
また、踵骨骨折後に限りませんが、骨折後の長引く痛みには脳疲労が関係していることも有り、BFI療法が有効です。
今回のブログでは、高所からの落下により受傷され当院に来院された実際の症例を元に、踵骨骨折に対する当院の考え方をご紹介致します。
Contents
当院に来院された症例
以前、当院に来院された踵骨骨折の症例をご紹介します。
年齢
55歳
性別
男性
受傷原因
自宅の庭の手入れ中に脚立より落下し踵部を強打する。
来院時外見
荷重できない状態で来院されました。外見上の変化や痛みと内出血の出ている部位、また、エコー検査の状況から踵骨骨折と判断し顧問の先生でレントゲン検査を受けました。
踵骨骨折のレントゲン
上の写真が踵骨骨折のレントゲン写真です。
赤い丸の所に骨のずれが確認でき、赤い矢印の所から踵骨を2つに割るように骨折線が入っています。
受傷時に青い矢印の方向から力が加わり、踵骨の縦幅が短縮(踵骨の扁平化)しているのが判ります。
また、外側へ転位している為に踵の幅が広くなっています。
この状態ですと、整復操作を行う必要があります。
上の図にある距骨下関節にある骨の角度(ベーラー角)を戻さなくてはいけません。
この角度を戻さないと骨の変形が残ったり、後遺症として痛みが残ります。
また、正面からみて踵骨が外側に転位している場合には、外側への転位も整復します。
整復後の写真
左の写真は受傷時の写真になります。右の写真は整復後の写真になります。
整復後は、赤い丸の中の骨の段差が無くなっています。
骨折している部分を把握して動かしますので痛みを伴いますが、この操作をするかどうかで予後が全く変わってきます。
また、CRPS体質の方もいらっしゃいますので、整復動作を行うときは術者側も非常に慎重に行います。
踵骨骨折の固定方法
踵骨骨折の場合は、骨折のタイプ・患者さんの年齢・生活スタイル等によって固定の仕方を変えます。
先程の症例に関しては、ギプスを全周巻くと言う事はせず、下腿後面から足尖までのギプスシャーレ固定を施しました。
ギプスを全周巻かない理由としては、骨片転位を伴った踵骨骨折に関しては、整復後にギプスを全周巻いてしまうと、腫れが引いてくるのと同時に、ギプス内で骨がずれる可能性があるからです。
これは踵の骨折に限ったことではありませんが、ギプス内で自然に骨がずれる時というのは特に痛みを伴うわけでもなく、ずれたことに関してもギプス上からではわかりません。
当院では、先ほどの症例のような骨折にはギプスシャーレ固定をして、施術の都度皮膚を清拭したり、骨折部に対しての微弱電流通電などの施術を行います。また、こまめにエコーにて骨折部にずれがないかどうかを確認しています。
固定期間
この方のギプスシャーレによる固定は8週間行いました。
踵骨骨折就寝時の注意
また、就寝時に踵が床面(布団の面)につかないように寝方の指導を行います。
ギプスによる硬い固定を施してあっても、就寝時に踵が床面につくと、上の図の赤い矢印の方向から踵部が突き上げられて患部に対して負荷がかかります。
具体的には座布団を2~3枚重ねた上に患肢(ふくらはぎ部分を載せて踵は載せない)を載せ、踵の部分が下から突きあげられないようにします。
これは足関節の捻挫の時も同様で、足関節の捻挫の時も、就寝時の踵の突き上げにより痛めた靱帯に負担がかかり悪影響が出ることが有る為、踵が敷布団につかないように寝方の指導を行います。
踵骨骨折の注意点
踵骨骨折は骨癒合する前に荷重してしまうと、固定してあっても骨がずれてしまいます。
中には、骨の形よりも骨の萎縮(骨が弱る)の事を考えて、早期より足をつかせる先生もいらっしゃいますが、私の考えとしては、荷重するのは骨折部が安定してからの方が良いという考えです。
また、荷重を開始する際には部分荷重から開始します。
その際には、体重計を用意し、どのくらい荷重していいのかを患者様と一緒に確認してから開始します。
踵骨骨折のリハビリ
踵骨骨折に限らない事ですが、骨折のリハビリは痛みを起こさないように行うこが第一です。動きが悪くなった関節や落ちてしまった筋肉の改善を図ります。
また、下腿三頭筋に強く緊張を起こさないように行うことも重要です。
まずは、痛みを確認しながら自分で行う自動運動から開始して頂きます。
その他、患部の状態を確認しながら筋力訓練、バランス訓練、歩行訓練を行っていきます。
これらのリハビリは物理療法と併用して行うと効果的です。当院ではリハビリを始める前に超音波浴にて筋肉の弛緩や血流の改善を行います。
踵骨骨折のまとめ
踵骨は体重を支持する場所ですので、骨折のタイプにより、徒手整復が可能なものに関しては転位している骨片を正しい位置に戻す必要があります。
特に関節面に骨折線が及んでいる骨折に関しては変形や痛みが残りやすいという特徴がありますので注意が必要です。
また、骨折が治ってからもしぶとく痛みが残る場合にはBFI療法が有効です。
受傷前から抱えていた脳疲労が影響しているか、怪我を負ったことによる焦りや、不安により発生した脳疲労が長引く痛みに影響しています。
当院では、リハビリ開始と同時に、様子を見てBFI療法も施術します。
骨折の治療中で疑問やお悩みがある方、骨折の痛みや動きの悪さ等の後遺症でお困りの方、まずはお気軽ご相談ください。