突然のケガで骨折と診断されると、

といった、様々な疑問や不安が生じるものです。特にスポーツの試合を控えている場合や、仕事への影響が心配な場合は、焦る気持ちも大きくなるでしょう。
この記事は、骨折をしてしまった方や、そのご家族が最初に知っておくべき情報を網羅した総合ガイドです。骨がつく(骨癒合)までの期間の目安から、回復をサポートするための栄養素、日常生活での注意点、そして治療法について、牛久市の蛯原接骨院が持つ専門的な知見を基に、網羅的に解説します。
Contents
骨折の癒合期間の目安と「グルトの骨癒合日数」
骨折した骨がくっつくこと(骨癒合)までの期間は、骨折した部位、骨の種類、年齢、そして全身の健康状態によって大きく異なります。しかし、古くから柔道整復師や整形外科医の間で参考にされている「グルトの骨癒合日数」という目安があります。
これはあくまで健康な成人の場合の目安であり、骨折が完全に治癒するまでの期間とは異なりますのでご注意ください。
部位別の骨癒合期間の目安一覧表
骨折部位 | グルトの骨癒合日数(目安) |
中手骨(手の甲) | 約2週間 |
肋骨 | 約3週間 |
鎖骨 | 約4週間 |
前腕骨(橈骨・尺骨) | 約5週間 |
腓骨(すねの外側の骨) | 約5週間 |
上腕骨骨幹部 | 約6週間 |
脛骨(すねの骨) | 約7週間 |
下腿両骨(すねの2本) | 約8週間 |
大腿骨骨幹部 | 約8週間 |
大腿骨頚部(股関節) | 約12週間 |
特に相談の多い部位の骨折については、より詳しい解説記事も用意されています。
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年齢や健康状態が骨癒合に与える影響
一般的に、子どもの骨は大人の2〜3倍の速さで癒合すると言われています。一方で、ご高齢の方や、骨粗しょう症、糖尿病などの持病がある方、栄養状態が良くない方、喫煙習慣のある方は骨の癒合に時間がかかる傾向があります。
お子様の骨折でご心配な方へ
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骨折が治るまでの3つのステップ【骨癒合のプロセス】
骨が折れると、人の体の中では驚くべき修復作業が始まります。この骨がつくプロセスを「骨癒合(こつゆごう)」と呼び、大きく分けて3つの段階で進んでいきます。
ステップ1:炎症期(骨折直後〜約10日)

骨が折れると、その周囲の血管も傷つき、出血して「血腫(けっしゅ)」と呼ばれる血の塊ができます。この血腫が、死んでしまった細胞などを取り除くための免疫細胞を呼び寄せ、同時に骨を作るための準備を始める「炎症反応」を引き起こします。炎症は、損傷部位が修復を始めた証拠であり、この時期の適切な固定と安静が後のプロセスをスムーズに進める鍵となります。
ステップ2:修復期(約10日〜約25日)


炎症が落ち着くと、血腫があった場所に新しい血管や線維組織が作られ始めます。そして、「骨芽細胞」という骨を作る細胞が集まってきて、「仮骨(かこつ)」と呼ばれる柔らかい骨を作り始めます。この仮骨が折れた骨の隙間を埋めるようにつながり、骨折部を安定させます。この時期になると、レントゲンでもうっすらと仮骨が確認できるようになります。
ステップ3:再造形期(リモデリング期)(約20日〜数年)

仮骨によってある程度骨が安定すると、今度はその仮骨が徐々に本来の硬い骨(層板骨)に置き換えられていきます。骨を壊す「破骨細胞」と、骨を作る「骨芽細胞」が協力し、不要な部分を削り、必要な部分を強化して、元の骨の形と強度に再構築していきます。この再造形が完了するには、数年単位の長い時間が必要です。
回復を左右する「骨癒合の条件」
骨の修復プロセスを順調に進めるためには、いくつかの条件が整っていることが望ましいとされています。
骨折部の接触: 折れた骨同士がきちんと接触していること。
骨折部の安定: ギプスなどで適切に固定され、安定していること。
十分な血流: 骨折部に栄養を運ぶための良好な血流があること。
十分な栄養: 骨の材料となる栄養素が摂取できていること。
十分な睡眠: 体の修復と成長ホルモンの分泌に睡眠は不可欠です。
基礎疾患の管理: 糖尿病や骨粗しょう症などの持病がない、または良好にコントロールされていること。
これらの条件が満たされていない場合、骨のつきが悪くなる可能性があります。
骨の回復をサポートする栄養素と食事のポイント
骨折からの回復を促すためには、骨の材料となる栄養を意識的に摂取することが非常に重要です。
カルシウム(骨の骨格となる): 小魚、緑黄色野菜(小松菜など)、納豆、乳製品
タンパク質(骨の骨格となる): 肉、魚、卵、大豆製品。ケガをしている時は通常より多くの量が必要です。
ビタミンD(カルシウムの吸収を高める): きのこ類、魚介類(しらす干しなど)、卵。日光浴も有効です。
ビタミンK(骨の形成を促進): 納豆、緑黄色野菜(モロヘイヤ、小松菜など)
ビタミンC(タンパク質合成に必要): 果物、野菜
マグネシウム(骨をつくる成分): 納豆、しらす、バナナ
これらの栄養素をバランス良く摂ることが理想ですが、食事だけで補うのが難しい場合は、サプリメントの活用も一つの方法です。
食事で回復をサポート
骨折からの回復を助ける具体的な食事メニューや、コンビニでも手軽に買える食品、簡単なレシピについては、こちらの記事で特集しています。
[骨折の回復をサポートする食事とは?摂るべき栄養素と簡単レシピ]
骨折からの回復をサポートする蛯原接骨院の物理療法アプローチ
蛯原接骨院では、ギプスなどで固定して自然治癒を待つだけでなく、様々な物理療法機器を駆使して、患者の回復プロセスを積極的にサポートします。
微弱電流治療器によるアプローチ
人の体には、もともとケガを治すための微弱な電気が流れています(生体電流)。骨折によって損傷した組織の修復を促すため、外部から特殊な微弱電流(マイクロカレント)を流す治療法があります。この治療は、細胞レベルでの組織修復を助けるとともに、痛みの原因となる物質を取り除く効果も期待できます。
この微弱電流の組織修復効果については、聖マリアンナ医科大学の研究でも報告されています。
聖マリアンナ医科大学 スポーツ医学講座の研究によると、骨格筋損傷に対する微弱電流刺激によって、筋再生時に活性化する「筋衛星細胞」が増加し、筋タンパク量の増加や筋線維断面積の増大なども有意に認められ、損傷した骨格筋の再生を促進させることが明らかになったとされています。
固定をしてただ待つだけでなく、こうした物理療法を併用することで、腫れや痛みの軽減、そして骨癒合の促進が期待できます。(※この治療は保険外施術となります)
【茨城県牛久市初導入】先進治療器「ノーマライザ」で回復期の痛みと循環をケア
蛯原接骨院では、先進の物理療法機器「ノーマライザ」も導入しています。骨折後の回復期における痛みや腫れ、循環不良に対してアプローチすることで、より快適な回復期間を過ごせるようサポートします。
より詳しく知りたい方へ
当院が導入している先進治療器「ノーマライザ」が持つ2つの機能や効果について、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
蛯原接骨院が考える「適切な固定期間」とは
レントゲン写真上の骨折線が、必ずしも固定を続けるべきサインとは限りません。骨の修復はレントゲンに写らない段階から始まっており、骨折線がまだ見えていても、関節が硬くなる前に関節を動かすリハビリを始めるべき適切な時期である場合が多いのです。
レントゲンだけで判断しない理由
固定を続けることの本当の問題点は、骨折した骨そのものよりも、その周りの関節や筋肉といった他の組織に起こる変化です。長期間動かさないでいると、関節を包む袋(関節包)や靭帯は柔軟性を失い、筋肉はみるみるうちに痩せてしまいます。これらは「廃用性変化」と呼ばれ、一度起こってしまうと回復に多くの時間と努力を要することになります。
超音波検査で「骨の修復具合」を目で見て確認する
蛯原接骨院では、超音波画像観察装置(エコー)を用いて骨折部の状態を定期的に確認します。超音波検査では、レントゲンには写りにくい、新しい骨の元である「線維性仮骨」の形成状態を詳細に観察することができます。
このエコー画像のように、修復が進んで痛みがなく、患部が安定していれば、レントゲンに骨折線が残っていても固定を外す判断ができます。回復の進み具合を画像で見ることで、安心して治療に取り組むことにもつながります。
当院のこだわり
なぜレントゲンだけでなく超音波検査を重視するのか、その理由とレントゲンとの違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
[なぜ蛯原接骨院は超音波検査を使うのか?レントゲンとの違いを解説]
注意すべき骨癒合の不全(遷延治癒・偽関節)
目安の期間を過ぎても骨癒合が進まない状態を「遷延治癒(せんえんちゆ)」と呼びます。これは骨の再生が遅れている状態です。この原因を放置すると、最終的に骨の再生が止まってしまい、骨が完全につかない「偽関節(ぎかんせつ)」に至る可能性があります。
遷延治癒や偽関節は、骨折部の感染、不十分な固定、血流不足、糖尿病などの基礎疾患が原因で起こりやすくなります。このような状態を防ぐためにも、早期に適切な処置を受け、原因を解消していくことが重要です。
骨折治療に関するよくあるご質問(Q&A)
Q1. 固定が外れたら、もう元の生活に戻れますか?
A1. 固定が外れた時点では、骨はまだ完全な強度には戻っていません。また、固定期間中に周りの筋肉や関節は硬くなっています。そのため、専門家の指導のもとで適切なリハビリテーションを行い、段階的に元の生活に戻っていくことが大切です。焦りは禁物です。
Q2. 固定中の生活で気をつけることは?
A2. 飲酒や喫煙を控え、患部を心臓より高く保つなどの工夫が、腫れや痛みの軽減につながります。また、固定されていない関節や指先は可能な範囲で動かすことが、血行促進や関節が硬くなるのを防ぐために非常に重要です。
リハビリ・生活のヒント
[骨折後のリハビリテーション完全ガイド|いつから何を始めるべき?]
[骨折のギプス固定中の生活マニュアル|かゆみ・お風呂・服装の悩み解決]
Q3. なかなか痛みが引かないのですが、大丈夫でしょうか?
A3. 骨折後の痛みは徐々に引いていくのが一般的ですが、痛みが長引いたり、悪化したりする場合は、別の問題が隠れている可能性も否定できません。不安な場合は、すぐに専門家に相談してください。
スポーツをされる方へ
繰り返し同じ部位に負荷がかかることで発生する「疲労骨折」の原因や見分け方、競技復帰までの流れについては、こちらの記事をご覧ください。
[スポーツ選手を悩ます「疲労骨折」の原因と見分け方]
まとめ:骨折治療の不安を解消し、前向きな一歩を踏み出すために
骨折の治療は、時に長く、不安な道のりに感じられるかもしれません。しかし、体の中で起こっている治癒のプロセスを正しく理解し、適切な治療とセルフケアを行えば、体は着実に回復へと向かっていきます。
牛久市の蛯原接骨院では、患者一人ひとりの不安な気持ちに寄り添い、伝統的な知識と最新の物理療法を組み合わせることで、回復をサポートします。レントゲンだけでなく超音波検査で回復具合を「見える化」し、適切な固定期間を見極め、一日も早い社会復帰を目指します。
骨折の治療や固定期間について、少しでも疑問や不安な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
【お問い合わせ】
お問い合わせは下記よりお願いいたします。
【接骨院詳細】
【蛯原接骨院】
住所: 〒300-1222 茨城県牛久市南2-1-12
電話番号: 029-872-2653
診療時間:
曜日 午前 午後 月~金 8:00~12:00 15:00~20:00 土 8:00~12:30 休診 日 休診 休診
アクセス: JR常磐線「牛久駅」徒歩5分
駐車場: 5台分有り
【監修】
院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師
痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。
一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。
より詳しい経歴やご挨拶については、こちらのページをご覧ください。
→ [院長紹介ページはこちら]
【免責事項】
本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。症状が改善しない、または悪化する場合には、速やかに専門の医療機関を受診してください。
「ギプスはいつ外れるのか?」
「少しでも早く回復する方法はないのか?」