妊娠中期から後期にかけて、多くの妊婦さんが経験する、睡眠中の足のつり(こむら返り)。突然の激痛で目が覚めてしまうのは、本当につらいものです。
なぜ、妊娠中にこれほど足がつりやすくなるのでしょうか。結論から言うと、その主な理由は、お腹が大きくなることによる**「体の変化(血行不良・筋肉への負担)」、お腹の赤ちゃんへ栄養を送るための「栄養不足(特にミネラル、鉄分)」、そして「ホルモンバランスの変化」**という、妊婦さん特有の要因が複合的に関わっているためです。
この記事では、妊娠中に足がつりやすくなるメカニズムを解説するとともに、お腹の赤ちゃんに配慮した安全な対処法と、今日からできる予防策を詳しくご紹介します。
なぜ妊娠中に足がつりやすくなるのか?3つの主な理由
理由1:体の変化による血行不良と筋肉への負担
妊娠が進むにつれて体が変化し、足の筋肉に様々な影響が及びます。
子宮による血管の圧迫: 子宮が大きくなることで、足の付け根にある太い血管が圧迫され、心臓への血流が滞りやすくなります。
体重の増加: 増えた体重を支えるため、ふくらはぎやすねの筋肉にかかる負担が大きくなります。
重心の変化: 大きくなったお腹で体の重心が前に移動し、バランスを取ろうとして無意識に足の筋肉が常に緊張した状態になります。
これらの要因が重なり、足の血行不良や筋肉疲労が起こりやすくなるのです。
理由2:赤ちゃんへの供給による栄養不足
お腹の赤ちゃんの成長のために、お母さんの体からは多くの栄養素が優先的に送られます。その結果、お母さん自身の体が必要とする栄養素が不足しがちになります。
ミネラル不足 (カルシウム・マグネシウム): 赤ちゃんの骨や筋肉が作られる過程で大量に消費されます。これらは筋肉の正常な収縮と弛緩に不可欠なため、不足すると痙攣(けいれん)の一因となります。
鉄分不足: 妊娠中は血液量が増加するため、血液中で酸素を運ぶ役割を担う鉄分が特に不足しがちです。鉄分が不足すると筋肉に十分な酸素が届かず、疲労しやすくなります。
タンパク質不足: タンパク質は筋肉そのものを作る材料です。不足すると筋力が低下し、増えた体重を支える足への負担がさらに増えやすくなります。
理由3:ホルモンバランスの変化
妊娠中は、出産に向けて関節や靭帯を緩める「リラキシン」などのホルモンが多く分泌されます。これらのホルモンは、筋肉の働きにも影響を与え、体のバランスが不安定になりやすい状態を作ります。
お腹の赤ちゃんに配慮した安全な対処法と予防策
激痛が起きた時の安全な応急処置(ストレッチ)
突然足がつってしまったら、慌てずに硬直した筋肉をゆっくりと伸ばすことが最も有効です。
座って伸ばす: 床やベッドに座り、つった方の脚を前に伸ばします。つま先をゆっくりと体の方へ引き寄せ、ふくらはぎの裏側を「痛気持ちいい」範囲で伸ばしましょう。つま先に手が届かない場合は、タオルを足の裏にひっかけて引っ張ると安全に伸ばせます。
壁を使って伸ばす: 壁に向かって立ち、両手を壁につけます。つった方の脚を後ろに引き、かかとを床につけたまま、ゆっくりと体を前に傾けてアキレス腱からふくらはぎを伸ばします。
※注意点: 絶対に反動をつけたり、痛みを我慢して無理に伸ばしたりしないでください。パートナーがいる場合は、ストレッチを手伝ってもらうのも良い方法です。

日常生活で取り入れたい4つの予防策
食事で栄養をバランス良く摂取する
特定の栄養素を意識的に食事に取り入れ、バランスの良い食生活を心がけましょう。カルシウム・マグネシウム: 牛乳、ヨーグルト、豆腐、納豆、小松菜、アーモンド
タンパク質: 肉、魚、卵、大豆製品
鉄分: 赤身の肉、レバー、あさり、ほうれん草
こまめな水分補給
脱水は血行不良を招き、足のつりを誘発します。喉が渇く前に、こまめに水分を摂ることを心がけましょう。体を冷やさない工夫
体の冷えは血行の大敵です。レッグウォーマーや締め付けの緩い靴下を活用したり、ぬるめのお湯で足湯をしたりして、特に足元を温かく保ちましょう。無理のない範囲での適度な運動
マタニティスイミングやウォーキング、ストレッチなど、医師に相談の上で適度な運動を取り入れると、血行が促進され、筋力低下の予防にもつながります。

公的機関の情報を知る
妊娠中の栄養摂取の重要性について、国も指針を示しています。
【引用】
妊娠期、授乳期を通して、バランスのよい食事を基本に、不足しがちなカルシウム、鉄、ビタミンなどを意識してとりましょう。
[出典: こども家庭庁「妊産婦のための食生活指針」]
このように、妊娠中は特にカルシウムや鉄分といった栄養素が不足しやすいため、食事でしっかり補うことが重要です。
妊娠中の足のつりに関するQ&A
Q1. こむら返りの漢方薬(芍薬甘草湯)は飲んでも大丈夫ですか?
A1. 「芍薬甘草湯」はこむら返りによく用いられる漢方薬ですが、妊娠中の服用については自己判断せず、必ずかかりつけの産婦人科医や薬剤師に相談してください。
Q2. むくみ対策の着圧ソックスは使っても良いですか?
A2. むくみの軽減に役立つ場合がありますが、締め付けが強すぎるものはかえって血行を妨げる可能性があります。妊婦さん向けに作られた、適度な着圧のものを選び、使用前には医師に相談することをお勧めします。
Q3. どのような状態であれば、医師に相談すべきですか?
A3. セルフケアを試しても改善しない、あまりに頻繁に繰り返す、痛みが非常に強い、片方の足だけが極端にむくんだり赤くなったりするといった症状がある場合は、血栓症などの可能性も考慮する必要があるため、速やかにかかりつけの産婦人科医に相談してください。
妊娠中の体をいたわることの大切さ
妊娠中の足のつりは、多くの妊婦さんが経験する症状の一つです。まずは今回ご紹介したようなセルフケアを試してみてください。そして、つらい時は一人で抱え込まず、パートナーや家族に協力してもらったり、かかりつけ医に相談したりすることが大切です。
この記事では妊娠中の足のつりに特化して解説しましたが、足のつりを引き起こすより広範な原因や対策については、以下の記事で網羅的に解説しています。
→ 『くり返す足のつり(こむら返り)、原因は?今すぐできる対処法から専門的なアプローチまで徹底解説』
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【免責事項】
本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。症状が改善しない、または悪化する場合には、速やかに専門の医療機関を受診してください。




