練習前の「ウォーミングアップ」と、練習後の「クールダウン」。多くの人がその重要性を頭では理解しつつも、時間がなかったり、面倒だったりで、ついおろそかにしてしまいがちな時間ではないでしょうか。
ウォーミングアップとクールダウンは、単なる“準備運動”や“整理運動”ではありません。これらは、練習効果を最大限に引き出し、怪我のリスクを最小限に抑えるための、トレーニングそのものに組み込まれた「科学的な戦略」なのです。
ウォーミングアップは、眠っている身体と心を最高の状態に導く「本番へのリハーサル」。そしてクールダウンは、次の練習に向けて身体をリセットする「回復への第一歩」です。
この記事では、なぜそれらが必要なのかという科学的な理由と、具体的に何をすれば良いのかを、写真付きで分かりやすく解説します。
ウォーミングアップの科学:眠っている身体のエンジンを、徐々に温める
いきなりトップスピードで走り出す車が故障しやすいように、準備のできていない身体で激しい運動を始めるのは非常に危険です。ウォーミングアップは、心と身体を「これから動くぞ!」というモードに切り替える、重要なスイッチの役割を果たします。
| ウォーミングアップの主な目的と効果 |
| ① 体温と筋温を上げる |
| ② 関節の動きを滑らかにする |
| ③ 神経の伝達スピードを上げる |
何をすればいい?「動的」ウォーミングアップの2ステップ
練習前におすすめなのは、**動きながら筋肉を伸ばす「動的ストレッチ」**です。じーっと伸ばす静的ストレッチは、筋肉をリラックスさせすぎてしまい、瞬発的な動きのパフォーマンスを低下させる可能性があるため、練習前には不向きです。
STEP 1:軽い有酸素運動(5分〜)
まずは、全身の血流を良くすることから始めましょう。
軽いジョギング
その場での足踏み
ジャンピングジャック(両手足を開閉するジャンプ)
少し汗ばみ、心拍数が少し上がる程度が目安です。
STEP 2:動的ストレッチ(5分〜)
次に、関節を大きく動かしながら、筋肉をリズミカルに伸ばしていきます。
腕回し: 肩甲骨から大きく、前回し・後ろ回し。
レッグスイング: 壁などに手をつき、脚を前後にブラブラと振る。
股関節回し: 膝を抱えるように持ち上げ、外側に大きく回す。

クールダウンの科学:興奮した身体を、安全に着陸させる
激しい運動後の身体は、いわば高速で走るF1マシンのようなもの。いきなりエンジンを切るのではなく、徐々にスピードを落としてピットインする必要があります。クールダウンは、興奮した身体を日常モードへと安全に軟着陸させるための、重要なプロセスです。
| クールダウンの主な目的と効果 |
| ① 心拍数を穏やかに下げる |
| ② 疲労物質の排出を促す |
| ③ 筋肉の柔軟性を高める |
何をすればいい?「静的」クールダウンの2ステップ
練習後には、**じっくりと筋肉を伸ばす「静的ストレッチ」**が効果的です。リラックスした状態で、心地よい伸びを感じながら行いましょう。
STEP 1:軽い有酸素運動(5分〜)
まずは、息を整えながら、心拍数を落ち着かせていきます。
ウォーキング
非常にゆっくりとしたジョギング
激しい練習から、いきなりストレッチに入るのは避けましょう。
STEP 2:静的ストレッチ(5分〜)
息を吐きながら、反動をつけずに、20〜30秒かけてゆっくりと筋肉を伸ばします。
太もも前のストレッチ: 立った状態で、片足の甲を持ち、かかとをお尻に近づける。
ふくらはぎのストレッチ: 壁に手をつき、アキレス腱を伸ばす。
お尻のストレッチ: 仰向けで片膝を抱え、胸に引き寄せる。

国のスポーツ政策の指針においても、特に幼少期から多様な遊びなどを通じて基礎的な動きを身につけ、「生涯にわたってスポーツに親しむための基礎を培う」ことの重要性が示されています。これは、特定のスポーツ動作だけでなく、あらゆる動きの土台となる体幹を安定させ、身体各部をスムーズに連動させるという考え方と深く一致します。
[引用元:スポーツ庁「第3期スポーツ基本計画(概要)」]
ウォーミングアップとクールダウンに関するよくある質問(Q&A)
Q1. それぞれ、どのくらいの時間をかけるのが理想ですか?
A1. 理想はそれぞれ10分〜15分程度ですが、その日の練習内容や気温によって調整するのが良いでしょう。時間がなくても、「最低5分ずつ」と決めて、習慣にすることが大切です。
Q2. ストレッチをすれば、筋肉痛は防げますか?
A2. クールダウンのストレッチは、筋肉痛を「完全に防ぐ」ものではありませんが、血流を促進して回復を助けることで、「軽減する」効果は期待できます。筋肉痛は、筋肉が成長している証でもあります。
Q3. 練習する時間がない時、ウォーミングアップとクールダウン、どちらを優先すべきですか?
A3. 非常に難しい質問ですが、怪我の予防という観点では「ウォーミングアップ」を優先してください。準備不足での運動は、大きな怪我につながるリスクが非常に高いからです。ただし、これはクールダウンが不要という意味ではありません。
まとめ:練習の「前後10分」が、未来のあなたへの投資になる
ウォーミングアップとクールダウンは、決して練習時間の無駄遣いではありません。それは、**今日の練習効果を最大化し、明日の自分のコンディションを整え、そして何より、未来の怪我を防ぐための、最も賢い「自分への投資」**です。
練習メニューと同じくらい、その前後の時間も大切にする。その意識が、あなたの競技人生をより長く、より豊かなものにしてくれるはずです。
▼準備をしても怪我が再発する…その原因は、もっと深いところにあるかもしれません
適切なウォーミングアップやクールダウンを実践していても、特定の怪我が繰り返される場合、身体の使い方そのものに、見えない癖や問題が隠れている可能性があります。なぜ怪我が再発するのか、その根本原因と身体全体のつながりについては、こちらの中心記事で詳しく解説しています。
→ 【スポーツ障害】なぜ、怪我はトレーニングをしない身体を作る。アスリート向け体幹トレーニング実践ガイド
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資格:柔道整復師
痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。
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本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。症状が改善しない、または悪化する場合には、速やかに専門の医療機関を受診してください。




