一度やってしまった足首の捻挫。

そういった不安を抱えていませんか?
足首捻挫が癖になってしまう本当の理由は、伸びてしまった靭帯だけでなく、足首のバランスを自動で保つ『センサー機能』の鈍化と、それによって引き起こされる『脳の疲労』にあります。
不安定になった足元を常に気にすることで脳が疲弊し、的確な指令が出せなくなる。その結果、反応が遅れて再発を繰り返すという悪循環に陥ってしまうのです。
この記事では、その「癖になる」メカニズムを科学的な視点から解き明かし、グラつく足元を安定させるための、今日からできる具体的なリハビリ戦略を、写真付きで分かりやすく解説します。
なぜ?足首捻挫が「癖になる」3つの科学的な理由
痛みが引いた後も、足首から脳にかけての連携システムには、見えない問題が残っています。これが、再発を繰り返す根本原因です。
理由1:足裏センサーの鈍化と、見過ごされがちな「脳の疲労」
私たちの足首には、地面の傾きなどを感知する精密な「センサー(固有受容器)」があります。捻挫でこのセンサーがダメージを受けると、脳への情報伝達が遅れ、バランスをとる反応が間に合わなくなります。これが、再発の大きな原因の一つです。
さらに近年の研究では、この問題が脳にまで影響を及ぼすことが分かってきました。
脳の“誤作動”と再プログラミング: 慢性的な足首の不安定性は、脳の運動をコントロールする領域に変化を引き起こし、「間違った動き」を正常だと誤認識させてしまうことがあります。
脳の疲労: 常に不安定な足元を気にして歩いたり、プレーしたりすることで、脳は無意識に過剰な緊張状態に。この「脳の疲労」が蓄積すると、集中力や判断力が低下し、いざという時に身体へ的確な指令を送れなくなり、再捻挫のリスクがさらに高まります。これは、BFI療法のようなアプローチが注目する、身体と脳の深い関係性の一例です。
当院で行っているBFI療法の詳しいページはこちらのページをご覧ください。

理由2:周りの筋肉が「過剰防衛」でガチガチになる
捻挫後、身体は再発を防ごうと、足首周りの筋肉をガチガチに固めて守ろうとします。この「過剰防衛」状態が続くと、足首本来のしなやかな動きが失われ、急な方向転換などに対応できず、かえって怪我のリスクを高めてしまいます。
理由3:全身に広がる「かばう動き(代償動作)」の連鎖
グラつく足首を無意識にかばうことで、歩き方や立ち方に不自然な癖(代償動作)がつきます。この動きは、足首だけでなく、膝・股関節・腰にまで負担をかけ、全身の不調や新たな怪我の原因となります。
グラつく足元を安定させる!3段階のリハビリ戦略
癖になった足首をリセットし、脳と身体の連携を取り戻すための3ステップです。焦らず、ご自身のペースで進めていきましょう。
STEP 1:まずは「足首の正しい動き」を取り戻す(可動域改善)
過剰防衛で硬くなった足首を優しくほぐし、本来の動きを思い出させます。
やってみよう!「タオルギャザー」
椅子に座り、床にタオルを広げます。
かかとを床につけたまま、足の指でタオルをゆっくりと手前にたぐり寄せます。
足の裏の筋肉が使われているのを感じながら、10回ほど繰り返しましょう。

STEP 2:「足裏センサー」を叩き起こす(脳への再教育)
眠ってしまったセンサーに刺激を入れ、脳に正しいバランス情報を送るように再教育します。これは、足首のリハビリであると同時に、脳のリハビリでもあります。
やってみよう!「片足立ち」
壁や椅子の近くに立ち、いつでも手をつける状態で始めます。
片方の足を少しだけ浮かせ、まずは10秒キープを目指しましょう。
慣れてきたら、時間を延ばしたり、目を閉じて行ったりすると、脳への刺激がさらに高まります。

STEP 3:実践的な動きで「安定性」を強化する
足首周りの筋肉を強化し、どんな状況でもブレない安定性を手に入れます。
やってみよう!「カーフレイズ」
肩幅に足を開いて立ちます。
壁などに軽く手をそえ、かかとをゆっくりと持ち上げ、つま先立ちになります。
一番高い位置で2〜3秒キープし、ゆっくりとかかとを下ろします。これを15回ほど繰り返します。
運動トレーニングの効果は、単に筋肉が強くなるだけでなく、脳から筋肉へ指令を出す「神経」の働きが、練習を通じてより効率的になることによってもたらされることが科学的に分かっています。リハビリで行う反復練習は、この神経の学習能力を利用して、怪我によって忘れてしまった「正しい身体の使い方」を脳に思い出させる、極めて重要なプロセスなのです。
足首捻挫の再発に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 捻挫した直後は、温めるべき?冷やすべき?
A1. 捻挫直後(受傷後〜72時間)は、炎症を抑えるために**「冷やす」**のが基本です(アイシング)。その後、腫れや熱感が引いてきたら、血行を促進して回復を助けるために「温める」段階に移行します。
Q2. サポーターは、いつまで着けていれば良いですか?
A2. サポーターは、痛みが強い時期や、スポーツ復帰直後の不安な時期に、足首を安定させるお守りになります。しかし、頼りすぎると足首本来の機能が育ちません。今回ご紹介したようなリハビリと並行し、日常生活では徐々に外す時間を増やしていくのが理想です。
Q3. お風呂の中で足首をグルグル回すのは、良いことですか?
A3. はい、痛みがなければ非常に良いセルフケアです。お風呂で身体が温まっているときは、筋肉や関節が動きやすくなっています。無理のない範囲で、ゆっくり大きく足首を回してあげることで、可動域の改善につながります。
まとめ:本当のリハビリが、再発の不安から解放する
足首捻挫が癖になるのは、不注意や運の悪さではありません。それは、痛みが引いた後も、足首から脳へと続く「機能」が回復していなかったという、明確な科学的理由があるのです。
今回ご紹介した3ステップのリハビリは、その眠ってしまった機能を呼び覚まし、足元に再び安定を取り戻すための、脳と身体への再教育プログラムです。
焦らず、じっくりとご自身の身体と向き合うこと。それが、再発の不安から解放され、再び全力でスポーツを楽しむための、最も確実な道すじです。
▼足首の問題は、全身の問題。根本原因を知りたい方へ
足首をかばうことで生まれる「代償動作」は、全身のバランスを崩し、様々な不調を引き起こします。なぜ怪我が繰り返されるのか、その根本的な原因と身体全体のつながりについては、こちらの中心記事で詳しく解説しています。
→ 【スポーツ障害】なぜ、怪我はトレーニングをしない身体を作る。アスリート向け体幹トレーニング実践ガイド
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院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師
痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。
一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。
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【免責事項】
本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。症状が改善しない、または悪化する場合には、速やかに専門の医療機関を受診してください。





「もう痛みはないはずなのに、なぜか同じ側ばかり何度もひねってしまう…」
「何もないところでグラッとするのが怖い」