バスケットボールでのパスカット、バレーボールでのレシーブ…。「あっ!」と思った瞬間に、指先にボールが当たってしまう経験は、多くのプレイヤーが持っているのではないでしょうか。
軽い突き指だと自己判断してプレーを続け、後から痛みが悪化したり、指が変形してしまったりするケースは少なくありません。この記事では、まず結論として、突き指を予防するための最良の方法と、受傷直後の正しい応急処置について、最新の国際的なガイドラインに基づき解説します。
突き指予防と応急処置の結論
突き指の最良の予防策は?
日頃からのストレッチや指のトレーニングに加え、**関節の動きを制限し保護する「テーピング」**が最も効果的です。特に、過去に突き指をしたことがある指や、プレー中に不安を感じる指には積極的に行うべきです。怪我をした直後の正しい応急処置は?
絶対に**指を引っ張ってはいけません。正しい処置は、従来のRICE処置から進化した、より包括的なアプローチである「PEACE & LOVE」**に沿って対応することです。
【Q&A】突き指とテーピングに関するよくある質問
Q1. 突き指をしたことがなくても、予防でテーピングはすべきですか?
A1. はい、推奨します。特に、指先に強い衝撃を受ける可能性のあるポジション(バスケのセンターやバレーのブロッカーなど)では、怪我の予防としてテーピングを行うことは非常に有効です。関節の可動域をあらかじめ少し制限しておくことで、大きな怪我につながるのを防ぎます。
Q2. テーピングはどのくらいの強さで巻けば良いですか?
A2. 「関節の動きを少し制限するが、血流は妨げない強さ」が理想です。巻いた後に指先が白くなったり、痺れたりする場合は強すぎます。指の曲げ伸ばしが完全にできなくなるほど固める必要はありません。
Q3. 軽い突き指なら、プレーを続けても大丈夫ですか?
A3. 自己判断でプレーを続けることはお勧めできません。軽いと思っていても、実際には腱や骨を損傷している可能性があります。プレーを続けることで症状が悪化し、回復が長引いたり、後遺症の原因になったりすることがあります。一度プレーを中断し、状態を確認することが重要です。
【予防の基本】けがを防ぐ正しいテーピング方法(バディテーピング)
ここでは、一人でも比較的簡単に行える「バディテーピング」をご紹介します。これは、怪我をした指(患指)と隣の健康な指を一緒に固定することで、患指への負担を軽減する方法です。

準備: 伸縮性のないホワイトテープ(幅1.3cm程度)を用意します。
アンカー: 患指と、その隣の指の「第二関節の下」に、それぞれテープを1周巻きます。これを「アンカー」と呼びます。きつく巻きすぎないように注意してください。
固定(バディ): 2本の指を揃え、アンカーテープの上と下を繋ぐように、テープを指の甲側と手のひら側から1本ずつ、合計2本貼ります。
確認: 最後に指を軽く曲げ伸ばしし、動きが適度に制限されているか、血流が悪くなっていないかを確認します。
【受傷直後】絶対にやってはいけないNG行動
突き指をした際、良かれと思ってやってしまいがちな、しかし症状を悪化させる可能性のある行動です。
指を無理に引っ張る: 最もやってはいけない行動です。もし骨折や腱の断裂があった場合、引っ張ることで損傷が悪化する危険性があります。
抗炎症薬(痛み止め)をむやみに飲む: 炎症は身体が組織を修復しようとする正常な反応です。これを薬で無理に抑え込むと、長期的な回復を妨げる可能性があります。
過度なアイシング(冷却)と温熱: 炎症を無理に抑えたり、逆に助長したりする可能性があり、最新のガイドラインでは推奨されていません。
無理に動かす・マッサージする: 損傷した組織をさらに傷つける可能性があります。
【最新の応急処置】RICEから「PEACE & LOVE」へ
かつて応急処置の基本は「RICE」でしたが、現在ではより積極的な回復を促すアプローチとして「PEACE & LOVE」が国際的に提唱されています。これは受傷直後の**「PEACE」と、その後の回復期の「LOVE」**の2つのフェーズに分かれています。
引用
このアプローチを最初に提唱した学術誌『British Journal of Sports Medicine』は次のように述べています。「軟部組織の損傷管理は、短期的なダメージコントロール以上のものです。この新しい枠組みは、治癒を最適化するために適切な負荷をかけることの重要性を強調し、抗炎症薬が長期的な組織の治癒に悪影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。」
(出典: British Journal of Sports Medicine)
受傷直後に行うべき「PEACE」
P (Protection / 保護): 痛みや腫れを悪化させる動きを1~3日間避けます。テーピングなどで指を保護しましょう。
E (Elevation / 挙上): 指を心臓より高い位置に保ち、腫れを軽減させます。
A (Avoid Anti-inflammatories / 抗炎症薬を避ける): 前述の通り、組織の修復に必要な初期の炎症を妨げないようにします。
C (Compression / 圧迫): テープや弾性包帯で軽く圧迫し、腫れをコントロールします。
E (Education / 教育): 身体の自然な治癒プロセスを理解し、過度な安静に頼らず、積極的な回復が重要であることを学びます。
数日後から開始する「LOVE」
L (Load / 適切な負荷): 痛みのない範囲で、少しずつ指を動かし始めます。適切な負荷は組織の修復を促します。
O (Optimism / 楽観主義): 回復には心理状態も影響します。前向きな気持ちが、より良い結果につながります。
V (Vascularisation / 血流促進): ウォーキングなど、痛みなく行える有酸素運動で全身の血流を促し、指の回復を助けます。
E (Exercise / 運動): 専門家の指導のもと、指の可動域、筋力、バランスを取り戻すための運動を積極的に行います。
これらの処置を行った上で、痛みが引かない、腫れが強い、指が変形しているなどの異常が見られる場合は、速やかに専門家にご相談ください。
「ただの突き指」ではない?より専門的な情報はこちら
この記事では、一般的な突き指の予防と応急処置に焦点を当てました。
しかし、もし受傷後に**「指の第一関節が曲がったままで伸びない」「痛みが長引く」といった症状が見られる場合、それは単なる突き指ではなく、腱の断裂や骨折を伴う『マレットフィンガー』**という専門的な処置が必要な怪我の可能性があります。
マレットフィンガーの原因から、当院での具体的な施術内容、日常生活での注意点までを網羅的に解説したメインコンテンツ(ピラーコンテンツ)をぜひご覧ください。
→ [【総合解説】マレットフィンガーの原因から施術、セルフケアまで]
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院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師
痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。
一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。
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