「もっと速く走りたい」「もっとキレのある動きがしたい」——その願い、実は筋肉だけでなく『神経』を鍛えることで、大きく飛躍するかもしれません。
神経筋トレーニングとは、脳からの指令を筋肉にスムーズに伝え、身体を思い通りに、そして無駄なく動かすための「身体の通信システム」をアップグレードするトレーニングです。
これは、ただ筋肉を大きくする従来の筋トレとは一線を画します。筋肉という”マシンの性能”を上げるだけでなく、それを操る”ドライバーの腕”を磨くようなもの。
その結果、あなたの持つ本来の身体能力が覚醒し、パフォーマンス向上と怪我予防を同時に実現します。
この記事では、その神経筋トレーニングの基本と、今日から始められる簡単なエクササイズをご紹介します。
「神経筋トレーニング」と「普通の筋トレ」は何が違うの?
同じトレーニングでも、目的や意識するポイントが全く異なります。車で例えるなら、エンジンを大きくするのが「普通の筋トレ」、運転技術や反応速度を磨くのが「神経筋トレーニング」です。
| 特徴 | 神経筋トレーニング | 普通の筋トレ(ウェイトトレーニング) |
| 主な目的 | 動きの質を高める、反応速度を上げる | 筋肉の量を増やす、発揮できる力を高める |
| 鍛える場所 | 脳、神経、筋肉の連携 | 主に筋肉そのもの |
| 意識すること | バランス、身体の使い方、着地の仕方 | 持ち上げる重さ、回数 |
| 効果 | パフォーマンス向上、怪我の予防 | 筋力アップ、筋肥大 |
神経筋トレーニングの三大要素と実践エクササイズ
神経筋トレーニングは、主に3つの要素で構成されています。どれも特別な器具は必要なく、ウォーミングアップなどにも取り入れやすいものばかりです。
要素1:バランス能力 〜身体の「位置情報システム」を磨く〜
なぜ大切なの?
バランス能力は、身体のブレを抑え、安定した動きを生み出す土台です。プレー中の不安定な体勢でも力を発揮したり、転倒を防いだりする上で欠かせません。
やってみよう!「片足立ち+コーンタッチ」
まっすぐに立ち、片方の足を軽く上げます。
軸足の膝を軽く曲げ、バランスを取りながら、上げた足で前・横・後ろの地面を軽くタッチします。
上半身がグラグラしないように、お腹に軽く力を入れて行いましょう。

要素2:プライオメトリクス 〜「バネの力」を最大限に引き出す〜
なぜ大切なの?
一瞬で大きなパワーを生み出す「瞬発力」を高めるトレーニングです。筋肉が伸ばされてから縮むまでの時間を短くすることで、地面からの反発を効率よく力に変え、ジャンプ力やダッシュ力を向上させます。
やってみよう!「ボックスジャンプ(着地重視)」
安定した低い台や段差の前に立ちます。
両腕を振って勢いをつけ、両足で箱の上にジャンプします。
一番大切なのは着地。音を立てず、猫のように「フワッ」と柔らかく着地することを意識しましょう。これが神経への正しい刺激になります。

要素3:アジリティ 〜「反応と切り返し」の速さを手に入れる〜
なぜ大切なの?
相手の動きやボールに素早く反応し、スピードを落とさずに方向転換するための能力です。急なストップやターンを繰り返すスポーツでは、パフォーマンスに直結します。
やってみよう!「ラダートレーニング」
地面にラダー(縄ばしご)を置きます。(なければ、地面にチョークで線を引くだけでもOK)
マス目を一つずつ踏んだり、横向きにステップしたり、様々なステップで素早く駆け抜けます。
腕をしっかり振り、リズミカルに行うのがポイントです。

神経筋トレーニングがもたらす絶大な効果
このトレーニングを続けることで、身体には嬉しい変化がたくさん訪れます。
怪我をしにくくなる
特に、女子選手に多い膝の前十字靭帯(ACL)損傷の予防に高い効果があることが、多くの研究で示されています。
動きが俊敏になる
脳からの指令が速く、正確になるため、「思った通りに身体が動く」感覚が高まり、プレーのキレが増します。
疲れにくくなる
身体の使い方がうまくなり、無駄な力みが減るため、エネルギー効率が良くなります。
[引用]
スポーツ庁が策定する「スポーツ基本計画」においても、アスリートの発育発達段階に応じて、多様な動きを経験することの重要性が示唆されています。これは、幼少期から神経系が発達する時期に、様々な刺激を与えて身体を巧みに動かす能力を養うという、神経筋トレーニングの考え方と深く関連しています。
神経筋トレーニングに関するよくある質問(Q&A)
Q1. どのくらいの頻度で行えばいいですか?
A1. このトレーニングは、重い負荷をかけるものではないので、週に2〜3回、ウォーミングアップの一部として取り入れるのがおすすめです。大切なのは回数よりも、一つ一つの動きの質。「いかに正確に、バランス良く動けるか」を意識しましょう。
Q2. 子供にやらせても大丈夫ですか?
A2. もちろんです。特に神経系が著しく発達するゴールデンエイジ(9〜12歳頃)のお子さんには、非常に効果的です。遊びの要素を取り入れながら行うことで、運動能力の土台を楽しく作ることができます。
Q3. プロのアスリート向けで、難しそう…
A3. そんなことはありません。今回ご紹介したエクササイズは、運動が苦手な方や、リハビリ中の方でも安全に行える基本的なものです。自分のレベルに合わせて、まずは「片足で5秒立つ」ことから始めてみましょう。その小さな一歩が、身体を変える大きなきっかけになります。
まとめ:眠っている身体能力を、「神経」から呼び覚まそう
神経筋トレーニングは、あなたの身体に眠っている潜在能力を引き出す、いわば「身体の再教育」です。ただがむしゃらに鍛えるのではなく、脳と筋肉の対話を促し、賢く、しなやかな身体を手に入れる。
この新しい視点が、あなたのパフォーマンスを次のレベルへと引き上げ、何よりも長く、楽しくスポーツを続けるための大きな助けとなるはずです。
▼「間違った動き」の記憶が、不調の原因になっていませんか?
今回ご紹介した神経筋トレーニングは、怪我によって脳に記憶されてしまった「間違った動きのパターン」をリセットし、再発を防ぐ上でも非常に重要です。なぜ怪我が繰り返されるのか、その根本原因と身体全体のつながりについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 【スポーツ障害】なぜ、怪我は再発するのか?パフォーマンスを落とさないための本質的なアプローチとは
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院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師
痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。
一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。
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