手首の骨折(橈骨遠位端骨折)でギプス固定をされると、日常生活が不便になるだけでなく、「固定が外れた後、ちゃんと元通りに動くのだろうか」という不安がつきまといます。後遺症を残さずスムーズに回復するためには、治療の段階に応じた「正しい動かし方」と「守るべき注意点」を知ることが不可欠です。
この記事では、手首骨折後の生活において、特に「動かす」という点に絞り、その注意点とリスクについて専門的な視点から解説します。
手首骨折後に絶対に避けるべき3つのNG行動
後遺症のリスクを減らし、順調な回復を目指すために、以下の3点は必ず避けるようにしてください。
自己判断で無理に動かす: 特にギプスが外れた直後、早く動かしたい気持ちから無理に手首を動かすと、痛みが悪化したり、回復が遅れたりする最大の原因になります。
指を全く動かさない: ギプスで固定されているのは手首です。固定されていない指を全く動かさないでいると、指の関節が硬くなり、むくみも悪化しやすくなります。
むくみ(浮腫)を放置する: むくみは血行不良のサインであり、痛みや関節が硬くなる原因にもなります。放置せず、積極的に対策することが重要です。
なぜ「動かす」と「動かさない」のメリハリが重要なのか
手首骨折の回復過程では、「積極的に動かすべき部分」と「慎重になるべき部分」が時期によって異なります。このメリハリを理解することが、後遺症を防ぐ鍵となります。
ギプス固定中:「指」を動かすべき理由
ギプスで固定されている間も、指は自由に動かせます。この時期に指を動かすことには、2つの重要な目的があります。
拘縮(かんしゅく)の予防: 動かさないでいると、関節は硬くなります。指を動かすことで、指関節の柔軟性を保ちます。
血行促進とむくみ軽減: 指の曲げ伸ばし(グーパー運動)は、筋肉がポンプのように働き、腕に滞りがちな血液やリンパ液の循環を助けます。これにより、むくみや痛みの軽減が期待できます。
ギプス除去直後:「手首」を慎重に動かすべき理由
ギプスが外れると、すぐにでも手首を動かしたくなりますが、この時期は最も注意が必要です。骨はまだ完全な強度には戻っておらず、非常にデリケートな状態です。専門家の許可なく、あるいは指示された範囲を超えて動かすと、痛みの増悪や、場合によっては再骨折のリスクも伴います。
【時期別】動かし方の具体的な注意点
ギプス固定中のセルフケア
この時期の目標は、「指の機能維持」と「むくみ対策」です。
指の運動: 痛みのない範囲で、1時間に数分程度、ゆっくりと指の「グー」「パー」を繰り返しましょう。無理に強く握り込む必要はありません。
腕を高く保つ(挙上): 座っている時や寝ている時に、クッションやタオルで腕を支え、常に手首が心臓より高い位置にあるように心がけましょう。
ギプス除去後のリハビリ初期
この時期は、必ず専門家の指導のもとで行います。自己判断は禁物です。
許可が出るまで手首は動かさない: ギプスが外れても、すぐに手首を動かして良いわけではありません。専門家が骨の回復状態を確認し、許可を出してからリハビリを開始します。
初期動作のポイント: 許可が出た後の最初の動きは、お風呂の中など、体が温まってリラックスしている状態で行うことが多いです。決して強い力を加えず、まずは関節の動く範囲を少しずつ広げていくことを意識します。
リハビリの重要性と後遺症について
適切なリハビリを行わないと、手首の動きが悪くなる(可動域制限)、筋力が戻らない、慢性的な痛みが残るといった後遺症につながる可能性があります。
この点について、日本整形外科学会も後遺症や合併症の可能性について言及しています。
引用
骨折が治ったあとも手首の動きが悪くなったり、変形が残ったり、力が弱くなったりすることがあります。またCRPSというやっかいな合併症が起こることもあります。
専門家の指導のもとで適切なリハビリを継続することが、こうしたリスクを防ぎ、元の生活を取り戻すために不可欠です。
「動かし方」に関するよくあるご質問(Q&A)
Q1. どのくらいの痛みなら動かして大丈夫ですか?
A1. 目安は「心地よいストレッチ感」です。ピリピリとした鋭い痛みや、動かした後にズキズキと痛みが残る場合は、動かしすぎのサインです。無理はせず、専門家に相談してください。
Q2. ギプスが外れたら、市販のサポーターをした方が安心ですか?
A2. サポーターは手首を安定させる助けになりますが、頼りすぎると筋力の回復を妨げる可能性もあります。使用するタイミングや種類については、自己判断せず、必ず専門家のアドバイスを受けてください。
Q3. パソコン作業をする時の注意点はありますか?
A3. 手首を反らせた状態が続くと負担になります。キーボードの手前にリストレスト(手首を置くクッション)を置く、こまめに休憩して手首を休ませるなどの工夫をしましょう。
Q4. 家族がリハビリを手伝っても良いですか?
A4. ご家族が無理に手首を動かすのは大変危険です。専門家から指導された自主トレーニングを見守ったり、日常生活で本人ができることを増やせるよう環境を整えたりといったサポートが最も安全で効果的です。
まとめ:より詳しい情報はこちらから
手首の骨折後の回復は、「動かすべき時」と「慎重になるべき時」の見極めが非常に重要です。特に、ギプスが外れた直後の自己判断は後遺症のリスクを高めます。必ず専門家の指導のもと、焦らず段階的に機能回復を目指しましょう。
この記事では「動かし方の注意点」に特化して解説しました。手首骨折の症状や固定法、具体的なリハビリメニューなど、より詳しい情報については、以下の各専門ページをご覧ください。
症状について: [コーレス骨折の症状|骨折の見分け方と整形外科的テスト法]
固定法について: [コーレス骨折の固定|ギプス固定の期間や種類、注意点を解説]
具体的なリハビリメニュー: [コーレス骨折のリハビリメニュー|手首の機能回復トレーニング]
ギプス固定中の日常生活: [コーレス骨折(橈骨遠位端骨折)の固定中の日常生活について]
合併症について: [コーレス骨折の合併症|後遺症を残さないために知っておくべきこと]
また、骨折全般の回復プロセスや栄養など、網羅的な情報については以下の中心記事をご覧ください。
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本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。症状が改善しない、または悪化する場合には、速やかに専門の医療機関を受診してください。