骨折の治療と聞くと、多くの人が石膏でできた真っ白な「ギプス」で、腕や足をガチガチに固める姿を想像するのではないでしょうか。確かに、ギプスは骨折部を強力に安定させるための伝統的で有効な方法の一つです。
しかし、当院ではコーレス骨折の治療において、原則としてこの「ギプスでガチガチに固める」方法は採用していません。
「なぜ?しっかり固定しなくて大丈夫なの?」と疑問に思うかもしれません。この記事では、当院がギプス固定を避ける理由と、それにとって代わる「固定法の考え方」について詳しく解説します。
「とりあえずギプス」に潜む4つのデメリット
ギプスによる強力な固定は、一見すると骨折治療に最適に思えます。しかし、特にコーレス骨折のような手首の怪我においては、いくつかの無視できないデメリットが存在します。
デメリット1:腫れの変化に対応できず、「再転位」のリスクがある
骨折した直後の手首は、内出血や炎症によって大きく腫れ上がります。この腫れている状態でギプスを巻くと、数日経って腫れが引いてきた際に、ギプスと腕の間に「隙間」ができてしまいます。この隙間の中で手首が動いてしまい、せっかく正しい位置に戻した骨が**再びずれてしまう(再転位する)**リスクが高まるのです。
デメリット2:関節が硬くなる「関節拘縮」を招きやすい
手首から指先までを長期間にわたって完全に固定すると、動かしていない関節が硬くなってしまいます。これを**「関節拘縮(かんせつこうしゅく)」**と呼びます。いざギプスが外れたときに、「手首が曲がらない」「指がこわばって動かしにくい」といった後遺症につながり、元の機能を取り戻すためのリハビリに多くの時間を要する原因となります。
デメリット3:筋力の低下や血行不良の原因になる
動かさない期間が長いほど、筋肉は衰えていきます。また、常に一定の強さで圧迫され続けることは、患部の血行を妨げ、骨の癒合に必要な栄養や酸素が届きにくくなる可能性も指摘されています。
デメリット4:衛生的でなく、皮膚トラブルのリスクも
ギプスは簡単には取り外せないため、汗をかいても洗うことができず、不衛生になりがちです。蒸れによって皮膚がかぶれたり、強いかゆみが出たりといった皮膚トラブルに悩まされる方も少なくありません。
当院の固定法の考え方:「動かすべきところは動かす」オーダーメイド固定
これらのデメリットを解消するために、当院では「骨折部を安定させるために必要な固定は行い、それ以外の動かせる部分は積極的に動かす」という考え方を採用しています。ただ闇雲に固めるのではなく、メリハリをつけることが重要です。
オーダーメイド固定を実現する材料
患者さん一人ひとりの状態に合わせて、以下のような固定材料を組み合わせます。
金属副子(シーネ)
格子状の番線にクッション材がついた固定具です。患者さんの腕の形に合わせて正確に形を整えることができ、骨折部を的確に支えます。包帯で巻くため、腫れの状態に合わせて調整が可能です。
包帯やテーピング
適度な圧迫を加えながら、副子を正しい位置に保持します。伸縮性のあるものなど種類も豊富で、状況に応じて使い分けることで、安定性と快適性を両立させます。
「動かす固定」がもたらす大きなメリット
この固定法によって、以下のような大きなメリットが生まれます。
メリット1:早期からのリハビリが可能に
手首はしっかり固定しつつも、指や肘、肩は自由に動かせます。これにより、関節拘縮や筋力低下を最小限に抑えることができます。
メリット2:腫れの状態に合わせた調整ができる
腫れが引いてきたら、その都度、固定を適切な強さに巻き直すことができます。これにより、再転位のリスクを大幅に減らせます。
メリット3:衛生的で快適な治療期間を過ごせる
専門家の指導のもとであれば、一時的に固定を外して皮膚を清潔に保つことも可能です。
結果として、これらのメリットは治療期間の短縮と、より質の高い機能回復につながります。
まとめ:固定の「質」が回復を決める
コーレス骨折の治療における固定は、「強ければ強いほど良い」というものではありません。「骨折部をいかに安定させ、同時に他の関節の機能をいかに維持するか」という、固定の「質」こそが、その後の回復を大きく左右します。
ギプスをしないことに不安を感じるかもしれませんが、それはより良い回復を目指すための、根拠に基づいた最新のアプローチなのです。
コーレス骨折全体の情報や、具体的な治療法、リハビリテーションについては、こちらの総合案内記事もご覧ください。
→ 【監修・柔道整復師】コーレス骨折の治療とリハビリ|手術以外の選択肢と後遺症を残さないための注意点
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