オスグッド病とは?原因・症状・治療法を専門家が徹底解説

「最近、子どもが膝の下を痛がるようになった」
「スポーツの後にいつも膝が痛いと言っている」
「オスグッド病って、そもそも何?」

スポーツに打ち込むお子さんが膝の痛みを訴え始めると、保護者の方は大変心配になることでしょう。この記事では、成長期の子どもたちに多く見られる「オスグッド病」について、その基本的な知識(原因・症状・一般的な対処法)を、専門家の視点から分かりやすく解説します。

オスグッド病は、成長とスポーツが交差する点で起こる「成長期特有の膝の痛み」です

オスグッド病(オスグッド・シュラッター病)は、急激な身長の伸びに対して筋肉の成長が追いつかず、その状態でスポーツによる負荷が膝にかかり続けることで発症します。

スポーツをする中学生や高校生に多くみられる、膝の脛骨粗面(お皿の下の骨)が徐々に突出し、痛みを生じる骨端症の一種である。
(Wikipedia「オスグッド・シュラッター病」より引用)

これは病気というよりも、成長過程で起こりやすい一種のスポーツ障害です。正しい知識を持って適切に対処すれば、また元気にスポーツを楽しめるようになりますので、まずは基本を理解することから始めましょう。

どんなスポーツや動きで起こりやすいの?

オスグッド病は、特定のスポーツや繰り返し行われる動きによって発症しやすくなります。お子さんの行っているスポーツが当てはまるか、確認してみましょう。

発症しやすいスポーツの例

特に、以下のような**「ジャンプ」「ダッシュ」「急な方向転換」**を多用するスポーツで多く見られます。

  • サッカー: ボールを蹴る動作、ダッシュとストップの繰り返し

  • バスケットボール: ジャンプ、着地、急な方向転換

  • バレーボール: スパイクやブロックでのジャンプと着地

  • 陸上競技: 短距離走や跳躍競技(走り幅跳び、走り高跳びなど)

  • その他: テニス、バドミントン、ダンスなど

膝に負担をかける具体的な動作

なぜこれらのスポーツで起こりやすいのでしょうか。それは、以下の動作がすべて、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)に強い負荷をかけるからです。

動作の種類解説
ジャンプと着地ジャンプする瞬間に大腿四頭筋が強く収縮し、着地の衝撃を吸収する際にも大きな負担がかかります。
ダッシュとストップ全力で走る時や、急に止まる(ブレーキをかける)時に、大腿四頭筋は爆発的な力と制御する力を同時に使います。
ボールを蹴る動作サッカーのキックのように、脚を強く振り出す動作は、大腿四頭筋の力強い収縮によって行われます。

これらの動作は、成長期で硬くなっている大腿四頭筋が、膝下の骨の付着部分(脛骨粗面)を繰り返し引っ張ることに直結します。その結果、負担が蓄積し、オスグッド病が発症するのです。

オスグッド病になりやすい子の特徴【リスクチェック】

お子さんはいくつ当てはまりますか?当てはまる項目が多いほど、オスグッド病になりやすい傾向があります。

チェック項目はい / いいえ
10歳~15歳で、身長が急に伸びている時期だ( )
サッカー、バスケ、バレーなどジャンプやダッシュが多いスポーツをしている( )
練習の頻度が高い(週4日以上など)、または練習時間が長い( )
練習前後のストレッチやクールダウンが不足しがちだ( )
太ももの前の筋肉が硬い、または張っている感じがする( )

一般的な治療と対処法:何をすればいいのか?

基本は「保存療法」

オスグッド病の治療では、手術を行うことは非常に稀で、「保存療法」が基本となります。骨の成長が落ち着くと、多くの場合、痛みは自然に軽減していきます。治療の主な目的は、痛みを上手にコントロールしながら、できる限りスポーツ活動を続け、日常生活に支障が出ないようにすることです。

一般的に行われる対処法

医療機関や接骨院では、以下のような対処法を組み合わせて行います。

対処法目的と内容
活動量の調整痛みの程度に合わせて練習量を減らしたり、ジャンプやダッシュなど痛みが強い練習を一時的に避けたりします。
アイシング(冷却)練習後や痛みがある時に、15~20分程度、氷のうなどで患部を冷やし、炎症と痛みを鎮めます。
ストレッチ指導硬くなった太ももの前後(大腿四頭筋、ハムストリングス)やお尻の筋肉を、痛みのない範囲で伸ばす方法を指導します。
物理療法痛みを和らげたり、筋肉の緊張を緩めたり、血行を促進したりするために、専用の電気治療器などを使用します。
サポーター等の処方プレー中の負担を軽減するため、オスグッドバンドやテーピング、インソール(中敷き)の使用を推奨することがあります。

家庭でできるセルフケアと日常生活の注意点

痛いときの最新の対処法:「PEACE & LOVE」の考え方

以前はケガの応急処置として「RICE処置」が一般的でしたが、最近ではより包括的なアプローチとして**「PEACE & LOVE」**という考え方が提唱されています。これは、痛めた直後の急性期に行う「PEACE」と、その後の回復期に行う「LOVE」の2つのフェーズに分かれています。

急性期の対処法:PEACE

  • P (Protection – 保護): 痛みを悪化させる運動や活動を避け、患部を守ります。

  • E (Elevation – 挙上): 患部を心臓より高い位置に保ち、腫れを軽減させます。

  • A (Avoid Anti-inflammatories – 抗炎症薬を避ける): 炎症は体の自然な治癒反応の一部です。痛みが強い場合を除き、自己判断で消炎鎮痛薬に頼りすぎないことが推奨されています。

  • C (Compression – 圧迫): テーピングやサポーターで軽く圧迫し、過度な腫れを抑えます。

  • E (Education – 教育): 自身の体の状態を正しく理解し、無理な復帰は長期的な回復を妨げることを学びます。

回復期のケア:LOVE

  • L (Load – 適切な負荷): 痛みのない範囲で、徐々に体重をかけたり、動かしたりしていきます。これが「積極的な回復」に繋がります。

  • O (Optimism – 楽観性): 回復には時間がかかることを理解し、前向きな気持ちで取り組むことが、回復を早める上で重要です。

  • V (Vascularisation – 血流促進): 痛みのない有酸素運動(スイミングや自転車など)を行い、患部への血流を増やし、組織の修復を促します。

  • E (Exercise – 運動): 専門家の指導のもと、ストレッチや筋力トレーニングを行い、可動域、筋力、バランス感覚を取り戻します。

やってはいけないこと

  • 痛みを我慢しての練習やストレッチ: 炎症を悪化させ、回復を遅らせる最大の原因です。

  • 自己判断での長期的な安静: 筋力低下を招き、復帰が困難になる可能性があります。専門家と相談しながら活動レベルを調整することが重要です。

専門家への相談を検討すべきタイミング

基本的なセルフケアで改善することも多いですが、以下のような場合は、自己判断で様子を見ずに専門家へ相談することをお勧めします。

  • 痛みが日に日に強くなっている場合

  • 安静にしていても痛む、歩くだけで痛む場合

  • 膝が明らかに腫れている、赤くなっている、熱を持っている場合

  • 痛みのせいで、びっこを引いて歩いている場合

  • 日常生活(階段の上り下り、学校生活など)に支障が出ている場合

  • どう対処すれば良いか分からず、保護者の方が不安な場合

専門家に相談することで、現在の状態を正確に評価し、お子さんに合った最適な対処法やリハビリ計画を立てることができます。不安を抱え込まず、早めに専門家の視点を取り入れることが、結果的にスムーズな回復への近道となります。

オスグッド病に関するよくあるご質問(Q&A)

Q1: 「成長痛」とはどこが違うのですか?

A1: 「成長痛」は痛む場所が日によって変わることが多いのに対し、オスグッド病は痛む場所が「膝のお皿の下の骨」に限定されるのが最大の違いです。また、押すと明確に痛む(圧痛)のも特徴です。

Q2: どれくらいでスポーツに復帰できますか?

A2: 症状や取り組み方によりますが、数週間から数ヶ月が目安です。大切なのは期間ではなく、痛みのない状態で段階的に運動強度を上げていくことです。専門家と相談しながら、焦らず進めましょう。

Q3: 痛いときは温める?冷やす?

A3: 運動後やズキズキ痛むとき(急性期)は、炎症を抑えるために「冷やす(アイシング)」が正解です。痛みが落ち着いて筋肉の硬さが気になるとき(慢性期)は「温める」のも良いですが、迷ったら冷やすようにしてください。

まとめ:オスグッド病の基本を理解して、正しく対処しよう

オスグッド病は、成長期のアスリートにとって非常によくある悩みの一つです。痛みのメカニズムを正しく理解し、適切な治療とセルフケアを行えば、乗り越えることができます。

一番大切なのは、「痛みを我慢しないこと」。痛みは体からの重要なサインです。そのサインに耳を傾け、焦らず、着実に回復へのステップを踏んでいきましょう。

なかなか痛みが引かない…その痛みには「隠れた原因」があるかもしれません

もし、この記事で紹介したような一般的な対処法を続けても症状が改善しない場合、痛みの背景に「身体の使い方のクセ」や、単なる筋肉の硬さだけではない、別の原因が隠れている可能性があります。

なぜ、安静にしてもストレッチをしても痛みが引かないのか?その答えがここにあります。当院独自の考え方と、より深い原因にアプローチする方法を解説したこちらの記事をご覧ください。
【オスグッド病が治らない方へ】痛みの原因は膝じゃない?脳疲労と自律神経に着目した新しいアプローチ

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【監修】

院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師

痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。

一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。

より詳しい経歴やご挨拶については、こちらのページをご覧ください。
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免責事項

本記事は、オスグッド・シュラッター病に関する情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代行するものではありません。症状に関する診断や治療については、必ず専門の医療機関にご相談ください。当ブログの情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。