【やってはいけない】オスグッド病で悪化するストレッチと正しいケア方法

はじめに:「ストレッチを頑張っているのに、良くならない…」と感じていませんか?

「オスグッド病にはストレッチが良いと聞いたから、痛いのを我慢して毎日続けている」
「指導者に言われた通りに伸ばしているのに、かえって痛みが強くなる気がする」
「本当にこのケア方法は合っているのだろうか…?」

オスグッド病のケアとして、ストレッチは非常に重要です。しかし、その方法を間違えると、良くなるどころか症状を悪化させてしまう危険性があります。

アンサーファースト:痛みを我慢して、無理やり太ももを伸ばすストレッチは逆効果です

結論から言うと、痛みを感じるほど強く、無理やり太ももの前(大腿四頭筋)を伸ばすストレッチは、症状を悪化させる可能性があるため、絶対にやってはいけません。

この記事では、なぜそれが危険なのかという理由と、安全かつ効果的な「正しいケア方法」について、具体的に解説します。

なぜ、痛みを我慢するストレッチは「やってはいけない」のか?

炎症の火に油を注ぐ行為

オスグッド病の痛みは、膝下の骨の付着部(脛骨粗面)で起きている**「炎症」**が原因です。例えるなら、膝に小さな火事が起きているような状態です。
この炎症が起きている部分を、痛みを我慢して無理に引っ張るストレッチは、火事が起きている場所に、さらに油を注ぎ込むようなものです。炎症を助長し、回復を遅らせてしまいます。

身体の「防御反応」を無視している

痛みは、身体からの「それ以上はやめて!」という危険信号です。この信号を無視してストレッチを続けると、身体は危険から身を守ろうとして、防御反応でさらに筋肉を硬直させてしまいます。良かれと思って伸ばしているつもりが、かえって筋肉をガチガチに固めてしまうという悪循環に陥るのです。

ストレッチングの際に疼痛を感じる強度まで伸張すると、筋の防御性収縮を誘発し、筋のリラクセーションが得られにくくなるため、至適な伸張強度とは言えない。
J-STAGE「ストレッチングのエビデンスと実際」より引用

安全に行うための「正しい」ストレッチとケアの原則

では、どのようにケアをすれば良いのでしょうか。重要なのは「伸ばす」ことだけではありません。「緩める」「冷やす」「負担をかけない」という多角的な視点が大切です。

正しいケアの3つの原則

原則解説
① 痛みのない範囲で行う「痛気持ちいい」はOK、「痛い」はNG。少しでも鋭い痛みを感じたら、すぐに中止します。
② 呼吸を止めないゆっくりと息を吐きながら行うことで、筋肉がリラックスし、効果的に伸びやすくなります。
③ 患部だけでなく、関連する筋肉もケアする太ももの前だけでなく、裏側(ハムストリングス)やお尻の筋肉もケアすることで、膝への負担が軽減されます。


ストレッチ以外の重要なセルフケア

  • アイシング(冷却): 練習後や痛みを感じるときは、必ず15~20分程度、氷のうなどで患部を冷やしましょう。炎症を抑える上で最も基本的なケアです。

  • フォームローラーなどで筋膜を緩める: 太ももの前側や外側など、硬くなっている部分をフォームローラーで優しくほぐすのも有効です。ストレッチとは違うアプローチで筋肉を緩めることができます。

  • 正しい身体の使い方を意識する: 膝が内側に入るような動きのクセ(ニーイン)があると、膝への負担が増大します。専門家の指導のもと、身体の使い方を見直すことも重要です。

世界の最新研究:ストレッチと筋力強化の組み合わせ

米国の理学療法の現場などでは、単に筋肉を伸ばす(ストレッチ)だけでなく、膝周り、特にお尻(臀部)や体幹の筋肉を強化することが、オスグッド病の改善と再発予防に非常に重要だと考えられています。
お尻や体幹の筋力が向上すると、ジャンプや着地の際に膝にかかる負担を、身体全体で分散させることができるようになります。痛みのない範囲で、お尻や体幹を鍛えるエクササイズを取り入れることは、より積極的なケアと言えるでしょう。

実際の症例:ケア方法を見直して改善したバレーボール選手

  • 年代・性別: 14歳・女子

  • スポーツ: バレーボール

  • 来院前の状況:
    オスグッド病と診断され、チームのトレーナーから「とにかく太ももの前を伸ばすように」と指導され、毎日痛みをこらえながらストレッチをしていた。しかし、ジャンプ時の痛みは一向に引かず、しゃがむことも辛い状態でした。

  • 評価とアプローチ:
    まず、痛みを伴うストレッチをすぐに中止してもらいました。身体の状態を評価すると、太ももの前だけでなく、お尻や太ももの裏側の筋肉も非常に硬くなっており、バランスが悪くなっていることが分かりました。
    院での施術と並行し、自宅でのケアとして、①痛みのない範囲での太もも・お尻のストレッチ、②練習後の徹底したアイシング、③お尻の筋肉を意識させる簡単なエクササイズの3点を指導しました。

  • 経過:
    間違ったストレッチをやめ、正しいケアに切り替えてから1週間で、しゃがむ時の痛みが軽減。3週間後には、ジャンプ時の痛みも大幅に改善しました。「痛いことをやめただけで、こんなに楽になるなんて」と驚いていたのが印象的でした。

よくあるご質問(Q&A)

Q1: ストレッチは、いつ行うのが効果的ですか?

A1: 筋肉が温まっている、お風呂上がりが最も効果的です。練習前は、軽く身体を動かす動的なストレッチ(ウォーミングアップ)に留め、練習後にゆっくりと伸ばす静的なストレッチとアイシングを行うのが理想的な流れです。

Q2: 少しでも痛みがあったら、ストレッチはしない方がいいですか?

A2: 鋭い痛みや、伸ばすことで痛みが増す場合は、中止してください。その時期はストレッチよりもアイシングを優先すべきです。筋肉の張りを感じる程度の「痛気持ちいい」範囲であれば問題ありません。

Q3: どのくらいの時間、伸ばせばいいですか?

A3: 1つのポーズにつき、ゆっくりと息を吐きながら20~30秒程度キープするのが目安です。反動をつけたり、強く引っ張ったりする必要はありません。

まとめ:正しい知識が、回復への一番の近道

オスグッド病のケアにおいて、ストレッチは有効な手段ですが、そのやり方を間違えると回復を妨げる原因にもなり得ます。大切なのは、身体の声をよく聞き、「痛い」という信号を無視しないことです。

今回ご紹介した正しいケア方法を実践し、安全かつ効果的に症状の改善を目指しましょう。

もし、正しいケアをしても痛みが引かない場合は…

この記事で紹介したセルフケアは、オスグッド病の基本的な対処法です。もし、これらのケアを続けても痛みが長引く、あるいは悪化する場合は、痛みの背景に単なる筋肉の硬さだけではない、より深い原因が隠れている可能性があります。

当院では、なぜ筋肉が過剰に硬くなってしまうのか、という大元にある「脳の疲労」や「自律神経」に着目したアプローチを行っています。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

【オスグッド病が治らない方へ】痛みの原因は膝じゃない?脳疲労と自律神経に着目した新しいアプローチ

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【蛯原接骨院】

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    休診休診
  • アクセス: JR常磐線「牛久駅」徒歩5分

  • 駐車場: 5台分有り

【監修】

院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師

痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。

一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。

より詳しい経歴やご挨拶については、こちらのページをご覧ください。
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本記事は、当院の施術に関する情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代行するものではありません。症状に関する診断や治療については、必ず専門の医療機関にご相談ください。当ブログの情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。