【アスリート・部活生向け】試合後半の失速を防ぐ!運動中の足のつり予防ガイド

大事な試合の後半、ここ一番で力を発揮したい瞬間に、突然襲ってくる足のつり(こむら返り)。この失速は、アスリートや部活動に励む学生にとって、パフォーマンスを大きく左右する深刻な問題です。

結論から言うと、運動中の足のつりを防ぐ鍵は、「水分」「電解質(特にマグネシウム)」「エネルギー」という3つの要素を、運動前から運動後まで戦略的にマネジメントすることにあります。単に水を飲むだけでは不十分であり、試合全体を通して体内のバランスを維持し続ける総合的なアプローチが不可欠です。

この記事では、試合後半の失速を防ぎ、最後まで高いパフォーマンスを維持するための、科学的根拠に基づいた具体的な予防策を解説します。

なぜ試合後半に足がつりやすいのか?3つの主な原因

試合後半に足がつりやすいのは、偶然ではありません。そこには明確な生理学的な理由が存在します。

原因1:水分と電解質(ミネラル)の急激な消耗

運動による発汗では、水分だけでなく、筋肉や神経の働きを正常に保つために不可欠なナトリウム、カリウム、そして特に重要なマグネシウムといった電解質が一緒に失われます。マグネシウムには筋肉をリラックスさせる(弛緩させる)働きがあり、これが不足すると筋肉が異常に興奮しやすくなります。試合が長時間に及ぶほど、これらの消耗は激しくなり、体内のミネラルバランスが崩れて痙攣(けいれん)を引き起こすのです。

原因2:エネルギー不足による筋肉機能の低下

筋肉を動かすための主要なエネルギー源は、筋肉内に蓄えられている「筋グリコーゲン」です。長時間の激しい運動によってこのエネルギー源が枯渇してくると、筋肉は正常に収縮・弛緩する能力が低下します。エネルギーが不足した筋肉は疲弊し、神経からの指令に対して誤作動を起こしやすくなります。

原因3:筋肉のオーバーヒートと疲労蓄積

激しい運動は、筋肉内に熱と乳酸などの疲労物質を蓄積させます。筋肉の温度が異常に上昇したり、疲労物質が溜まったりすると、筋肉の伸び縮みをコントロールしているセンサーの働きが鈍くなります。その結果、脳からの指令がうまく伝わらず、筋肉の異常な収縮が起こりやすくなるのです。

パフォーマンスを維持するための実践的予防策

足のつりは、試合が始まってから対処するのでは遅すぎます。試合前・中・後の各段階で、計画的に対策を講じることが重要です。

試合・練習【前】の準備

試合開始の2〜4時間前から、500ml程度の水を少しずつ分けて補給し、体内の水分レベルを最大限に高めておきましょう。喉が渇いていなくても、計画的に摂取することがポイントです。

試合の2〜3時間前までに、消化の良い炭水化物(ごはん、うどん、バナナなど)を中心に食事を済ませ、筋グリコーゲンを満タンにしておきましょう。また、日頃からマグネシウムが豊富な海藻類、ナッツ、大豆製品を意識して摂取することも、つりにくい体作りの基本です。

試合・練習【中】のマネジメント

「喉が渇いた」と感じた時点では、すでにパフォーマンスが低下するレベルの脱水が始まっています。試合中や練習中は、15〜20分おきに150〜200mlを目安に、電解質が含まれたスポーツドリンクなどを計画的に摂取しましょう。

1時間を超えるような長時間の運動の場合は、水分補給と同時にエネルギー補給も必要です。エネルギーゼリーなどを活用し、エネルギー切れを防ぎましょう。

試合・練習【後】のリカバリー

運動直後のクールダウンと、使った筋肉をゆっくり伸ばす静的ストレッチは、血流を促進し、疲労物質の排出を助けます。特に、ふくらはぎや太ももの裏側は念入りに行いましょう。

[画像:サッカー選手や陸上選手が、試合後に芝生の上でふくらはぎのストレッチをしている様子]

運動後30分以内は「ゴールデンタイム」と呼ばれ、栄養の吸収率が高まっています。タンパク質(筋肉の修復)と炭水化物(エネルギーの回復)をバランス良く摂取し、体の回復を促しましょう。

公的機関の情報を知る

スポーツ活動における水分補給の重要性について、国も具体的な指針を示しています。

【引用】
WBGT(暑さ指数)が基準値を超える環境で運動する場合は、0.1~0.2%の食塩(ナトリウムとして、飲料 100ml あたり 40~80mg)と糖質を含んだ冷たい飲料を、こまめに摂取することが推奨されます。糖質は水分の吸収速度を速めるだけでなく、エネルギー源として運動の継続にも役立ちます。
[出典: スポーツ庁「安全なスポーツ活動のために ~熱中症事故の防止に向けて~(令和6年度版)」]

このことからも、運動中の水分補給では、ただの水ではなく、塩分や糖質を含む飲料が効果的であることがわかります。

アスリート向けQ&A

Q1. 水だけを飲むのではダメなのでしょうか?
A1. 大量の汗をかく状況で水だけを大量に飲むと、体内の電解質濃度が薄まり、かえって足のつりを誘発する「自発的脱水」という状態になることがあります。汗を多くかく場合は、必ずナトリウムなどの電解質が含まれたスポーツドリンクなどを利用しましょう。

Q2. 試合直前に食べると良い具体的な食品は何ですか?
A2. 試合開始の1〜2時間前であれば、消化が早くすぐにエネルギーに変わるバナナやエネルギーゼリー、オレンジジュースなどが適しています。食物繊維や脂質が多いものは消化に時間がかかるため、避けた方が良いでしょう。

Q3. しっかり対策しているつもりでも、足がつってしまいます。他に原因はありますか?
A3. 睡眠不足による疲労の蓄積や、精神的なプレッシャーによる「脳の疲労」も、自律神経の乱れを介して筋肉の異常な緊張を引き起こす一因となります。日頃のコンディショニング全体を見直すことも重要です。

最高のパフォーマンスを発揮するために

この記事では、アスリートや部活生が試合後半に失速しないための、運動中の足のつり予防策に焦点を当てて解説しました。しかし、紹介した対策を講じても症状が繰り返される場合、日頃の体のケアや、身体の歪みなど、競技生活の背景にある他の要因が影響している可能性も考えられます。

以下の記事では、足のつりを引き起こすより広範な原因を網羅的に解説し、専門的な視点から、多角的な解決策についてご紹介しています。ぜひ、あわせてご覧ください。

『くり返す足のつり(こむら返り)、原因は?今すぐできる対処法から専門的なアプローチまで徹底解説』

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院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師

痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。

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【免責事項】
本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。症状が改善しない、または悪化する場合には、速やかに専門の医療機関を受診してください。