ある日突然、親御さんが転倒して骨折したという知らせを受け、「これからどうなってしまうのだろう」と、いてもたってもいられない気持ちでいらっしゃることでしょう。
「仕事はどうしよう」
「実家に通わなければならないのか」
「このまま寝たきりになったり、認知症が進んでしまったら…」
次から次へと押し寄せる不安と、『自分がしっかりしなければ』という責任感の中で、何から手をつければ良いのか途方に暮れてしまうのは、決して特別なことではありません。
この記事では、ご高齢の親御さんが腕の付け根(上腕骨)を骨折されたご家族に向けて、漠然とした不安を「今、何をすべきか」という具体的な行動に変えるための情報を分かりやすく解説します。
この記事のポイント
高齢者の骨折は「その後」が重要
骨そのものだけでなく、骨折をきっかけとした全身の衰え(廃用症-群)や認知症の進行を防ぐことが、その後の生活の質を大きく左右します。過度な安静はリスクになる
最新の考え方では、痛みや骨折の状態に配慮しつつ、専門家の管理下でできるだけ体を動かすことが「寝たきり」を防ぐ鍵とされています。家族のサポートは「時期」で考える
「固定期間中」「リハビリ期」「自宅での生活に向けて」と、時期ごとに求められるサポートは異なります。一つずつ段階的に考えれば、無理なく取り組めます。一人で抱え込まない
ご家族だけで全てを背負う必要はありません。医師や柔道整復師、ケアマネージャーなど、様々な専門家と連携する「チーム」で支えることが、最善のサポートにつながります。
なぜ高齢者の骨折は“特別”なのか?
まず知っておきたいのは、ご高齢の方の骨折が、若い世代の骨折とは少し意味合いが違うという点です。単に「骨がつきにくい」というだけでなく、骨折そのものが、その後の生活を一変させてしまうリスクをはらんでいます。
① 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)との深い関係
高齢者の上腕骨骨折の多くは、骨がもろくなる「骨粗鬆症」が背景にあります。軽く手をついただけといった、若い人なら何でもないような転倒で折れてしまうのが特徴です。そのため、骨折の治療と同時に、骨粗鬆症自体の管理も重要になります。
② 「寝たきり」につながる廃用症候群のリスク
骨折で体を動かせない状態が続くと、筋肉が衰え、関節が固まり、心肺機能も低下します。このような全身の機能低下を**「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」**と呼びます。この危険性については、国の研究報告でも厳しく指摘されています。
引用:厚生労働科学研究成果データベース
高齢者では若年者と異なり,安静により容易に廃用症候群を生じる.一度生じた廃用症候群の回復は容易ではないことから,予防が最も重要である.
一度この状態に陥ると、回復には時間がかかり、そのまま「寝たきり」になってしまうことも少なくありません。
③ 認知機能への影響
入院による環境の変化や、動けないことによる外部からの刺激の減少は、認知症の進行や、せん妄(一時的な意識の混乱)を引き起こすことがあります。痛みや不安が、さらにその状態を悪化させることもあります。
【米国の最新動向】
こうしたリスクを防ぐため、米国の高齢者医療では、骨折後の過度な安静はかえって廃用症候群のリスクを高めるため、専門家の管理下で可能な限り早く体を動かすことが推奨されています。「骨がつくまで、とにかく安静に」という考え方は、現在では見直されつつあります。
家族ができる具体的なサポート【時期別ガイド】
ご家族のサポートは、親御さんの回復段階に合わせて内容を変えていくことが大切です。
① 固定期間中のサポート
食事の工夫: 骨の材料となる栄養素を意識的に摂れるようサポートしましょう。
タンパク質: 肉、魚、卵、大豆製品
カルシウム: 牛乳、乳製品、小魚、緑黄色野菜
ビタミンD: きのこ類、魚類(カルシウムの吸収を助ける)
ビタミンK: 納豆、緑黄色野菜(骨の形成を助ける)

精神的なケア: 最も重要なサポートの一つです。痛みと不自由さで、ご本人は一番つらく、不安を感じています。「焦らなくていいよ」「一緒に頑張ろう」といった、安心感を与える声かけを心がけましょう。
② リハビリ期のサポート
励ましと見守り: リハビリは、ご本人の「治したい」という意欲が不可欠です。痛みを伴うこともあり、くじけそうになる時もあります。「少し動かせるようになったね」など、小さな変化を見つけて具体的に褒め、前向きな気持ちを支えましょう。
専門家との情報共有: リハビリの担当者(理学療法士や柔道整復師)から、現在の回復状況や、ご自宅でできること・注意すべきことなどを聞き、ご家族も情報を共有することが大切です。
③ 自宅での生活に向けたサポート
転倒予防の環境整備: 「二度目の骨折」を防ぐことが非常に重要です。
床に物を置かない、コード類をまとめる
滑りやすいマットや絨毯は撤去する
トイレや浴室、廊下に手すりをつける
部屋の段差を解消する
夜間でも足元が明るいように、センサーライトなどを設置する

専門家との連携が、最善のサポートです
ここまでご家族ができるサポートを解説してきましたが、すべてを一人で、あるいはご家族だけで抱え込む必要は全くありません。
親御さんの回復には、医師、看護師、理学療法士、柔道整復師(接骨院)、ケアマネージャーといった専門家が連携する「チーム」で取り組むことが最も効果的です。特に私たち接骨院は、固定期間中のケアからリハビリまで、地域で身近に寄り添い、身体的なサポートを行う専門家です。
ご家族も、そのチームの大切な一員です。「こんなことを聞いてもいいのだろうか」と遠慮せず、専門家にどんどん質問し、頼ってください。ご家族が一人で疲れ果ててしまうことこそ、避けなければならない事態です。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 認知症の親が、痛がって固定を外そうとしてしまいます。
A1. まずは、なぜ固定が必要なのかを、ご本人が理解できる簡単な言葉で根気強く説明することが大切です。その上で、かゆみや蒸れなど、他に不快な原因がないかを確認しましょう。衣類を工夫して固定部に触れにくくしたり、それでも難しい場合は、担当の先生に相談し、固定方法の見直しを検討してもらうことも必要です。
Q2. 痛みを理由にリハビリを拒否します。どうすればいいですか?
A2. 無理強いは逆効果です。まずは「痛いのに頑張っているね」と、ご本人の気持ちを受け止めることが第一歩です。その上で、リハビリの担当者に「痛みが強いようなのですが、何か方法はありますか?」と相談し、ご本人・家族・専門家の三者で、痛みを最小限に抑えながらできる運動がないか、一緒に考えていく姿勢が大切です。
Q3. 遠方で暮らしており、頻繁に実家に行けません。
A3. 物理的なサポートが難しい場合、まずは電話などで頻繁に声を聞かせてあげることが、大きな精神的支えになります。その上で、地域の介護保険サービスなどを活用できないか、担当のケアマネージャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。買い物代行や見守りサービスなど、ご家族の負担を軽減しつつ、ご本人を支える方法はたくさんあります。
まとめ:完璧な介護より、頼れる先を見つけること
親御さんの突然の骨折に、ご自身の生活も大きく変わり、心身ともにお疲れのことと思います。しかし、完璧な介護を目指す必要はありません。
ご家族にしかできない大切な役割は、精神的な支えとなることです。そして、食事の準備や環境整備など、できる範囲のサポートを行い、それ以外の専門的な部分は、どうぞ私たち専門家チームにお任せください。
茨城県牛久市、龍ヶ崎市、阿見町、土浦市周辺で、親御さんの骨折後の生活やリハビリにご不安やお悩みをお持ちでしたら、一人で抱え込まず、牛久市の蛯原接骨院へご相談ください。ご家族の皆様と共に、最善のサポートプランを考えていきます。
▼ご本人の治療法や回復までの流れを、さらに詳しく知りたい方へ
この記事では、ご家族としてできるサポートを中心に解説してきました。親御さんを支える上で、次にご本人が受ける治療そのものについて深く理解することは、ご家族自身の安心にも繋がります。
「具体的にどのような固定をするの?」「骨の回復を促すためにどんな治療をするの?」「本格的なリハビリはいつから始まる?」といった、より専門的な疑問にお答えするため、治療の全体像をまとめた記事をご用意しました。ぜひ、あわせてご覧ください。
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【監修】
院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師
痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。
一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。
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本記事は、当院の施術に関する情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代行するものではありません。症状に関する診断や治療については、必ず専門の医療機関にご相談ください。当ブログの情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。




