オスグッド病の子供との向き合い方:保護者と指導者のためのサポートガイド

はじめに:「頑張れ」以外の、どんな言葉をかければいいのだろう?

「痛がる子どもに、つい『しっかりケアしなさい』と強く言ってしまう」
「練習を休ませたい親の気持ちと、休みたくない本人の気持ちがぶつかってしまう」
「指導者として、選手の将来を考えた判断ができているか不安だ」

オスグッド病になったお子さんや選手を前にして、サポートする立場の保護者や指導者の方々も、同じように悩み、心を痛めていることでしょう。身体のケアはもちろん重要ですが、それと同じくらい、周囲の大人の「関わり方」が、子どもの心の健康と回復過程に大きな影響を与えます。

最も重要なサポートは、子どもの「焦り」と「孤独」を理解することです

オスグッド病の子供を支える上で最も大切なのは、痛みの裏に隠された「焦り」「孤独」「不安」といった、目に見えない心の痛みを理解し、寄り添うことです。

この記事では、子供たちが抱える心理的な側面に焦点を当て、保護者と指導者が今日から実践できる具体的な向き合い方、サポートの方法を解説します。

オスグッド病の子供が抱える、見えない心の痛み

大人が思う以上に、子どもたちは自分の身体の状態に敏感で、様々な葛藤を抱えています。

  • 焦り: 「自分だけが練習できず、周りに置いていかれる」「レギュラーから外されてしまうかもしれない」という、競技者としての焦り。

  • 孤独感: チームメイトが元気に練習している中で、一人だけ別メニューや見学をすることへの疎外感や孤独感。

  • 不安: 「この痛みは本当に治るのだろうか」「また全力でプレーできるようになるのか」という、将来に対する漠然とした不安。

  • 罪悪感: 練習を休むことや、チームに迷惑をかけていることに対する申し訳なさや罪悪感。

これらの感情が、回復に必要な心身のリラックスを妨げ、症状を長引かせる一因になることさえあります。

保護者と指導者にできること:今日から実践できるサポートのポイント

子どもの心を支え、前向きな回復を促すために、周囲の大人ができることは何でしょうか。

1. まずは保護者が慌てないこと

お子さんの痛がる姿を見ると、心配になるのは当然です。しかし、その不安や焦りがお子さんに伝わってしまうと、かえって回復の妨げになることがあります。

子ども自身が一番「治るのだろうか」と不安を感じています。その上で、最も身近な存在である保護者の方が慌ててしまうと、その不安はさらに増幅され、心身の緊張状態が高まります。その結果、身体の回復力が十分に働かず、症状が不安定になったり、回復が遅れたりする一因となり得ます。

また、心配のあまり、次から次へと色々な医療機関を渡り歩く「ドクターショッピング」も注意が必要です。行く先々で異なる説明を受けると、何が正しいのか分からなくなり、かえって親子共に不安が大きくなってしまうケースは少なくありません。

まずは一つの場所で専門家とじっくり向き合い、信頼関係を築きながら、落ち着いて回復への道筋を立てることが大切です。

2. 正しい知識を持ち、痛みを軽視しない

まず大前提として、オスグッド病は「気のせい」や「ただの成長痛」ではありません。明確な原因がある、痛みを伴うスポーツ障害です。
「昔はこれくらい普通だった」「気合が足りない」といった言葉で片付けず、痛みを真摯に受け止め、理解を示す姿勢が、信頼関係の第一歩です。

3. 「言葉のかけ方」を変える

良かれと思った言葉が、子どもを追い詰めてしまうことがあります。

やってはいけない声かけ(NG例)こう変えよう(OK例)
「いつになったら治るの?」「焦らなくて大丈夫だよ。一緒に治していこう」
「休んでばかりいないで、何かできることをしなさい」「今できるトレーニングを一緒に探してみようか」
「ストレッチが足りないからだ」「痛くない範囲で、ケアを続けているのは偉いね」
「頑張れ!」(追い詰める可能性がある場合)「よく頑張っているね」「無理しないでね」

4. スポーツ以外の「できること」に目を向ける

練習に参加できなくても、チームへの貢献は可能です。

  • 練習の準備や片付けを手伝う

  • 後輩の指導を手伝う

  • 試合のビデオを撮り、分析を手伝う

  • 声を出してチームを応援する

プレーができなくても「自分はチームの一員である」という実感を持つことは、孤独感を和らげ、自己肯定感を維持する上で非常に重要です。

世界の最新研究:「生物心理社会モデル」の重要性

近年のスポーツ医学では、ケガからの回復を考える上で**「生物心理社会モデル(Biopsychosocial Model)」**というアプローチがスタンダードになっています。
これは、選手の回復には、身体的な要因だけでなく、心理的・社会的な要因すべてが相互に影響し合うという考え方です。

引用
“アスリートが受傷すると、身体的な機能低下だけでなく、心理的にも大きな影響を受けます。…これらの心理的側面は、リハビリテーションへの取り組みや競技復帰の成否に大きく影響するため、身体的な回復だけでなく、心理的なサポートも不可欠です。”
慶應義塾大学保健管理センター「リコンディショニング支援」より引用

つまり、保護者や指導者による精神的なサポートは、単なる気休めではなく、科学的にも選手の回復を促進する上で不可欠な要素であると言えるのです。

よくあるご質問(Q&A)

Q1: 子どもが痛みを隠して練習しようとします。どうすればいいですか?

A1: まずは、なぜ痛みを隠してまで練習したいのか、その背景にある「焦り」や「不安」をじっくりと聞いてあげてください。その上で、「ここで無理をすることが、結果的に復帰を遅らせてしまう」「今の目標は、万全の状態で復帰することだ」と、長期的な視点を持つことの重要性を伝えましょう。

Q2: 練習を休ませることについて、チームや指導者の理解が得られません。

A2: 可能であれば、専門家からの診断内容や治療計画を、具体的に指導者へ伝えることをお勧めします。第三者である専門家の意見を交えることで、感情的な対立を避け、建設的な話し合いがしやすくなります。

Q3: どの程度、練習に参加させて良いのか判断がつきません。

A3: 基本的な判断基準は「痛みを我慢していないか」です。少しでも痛みがある動きは避けるべきです。どのレベルの運動が可能なのかは、身体の状態によって日々変化します。本人とコミュニケーションを取りながら、専門家のアドバイスに基づいて慎重に判断することが重要です。

まとめ:一番のサポーターは、一番の理解者であること

オスグッド病と闘う子どもにとって、保護者や指導者は、身体のケアを手伝うだけでなく、一番身近な心の支えです。

痛みを理解し、焦る気持ちを受け止め、共に回復への道のりを歩む。その温かいサポートこそが、子どもが困難を乗り越え、人としても成長するための、何よりの力となるはずです。

もし、サポートを尽くしても痛みが長引く場合は…

この記事では、周囲の大人ができる精神的なサポートについて解説しました。しかし、適切な関わり方をしても、身体の痛みがなかなか改善しない場合、その背景にはセルフケアだけでは対処が難しい、身体の機能的な問題が隠れている可能性があります。

当院では、なぜ痛みが長引いてしまうのか、その原因となりうる「脳の疲労」や「自律神経の乱れ」に着目したアプローチを行っています。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
→【オスグッド病が治らない方へ】痛みの原因は膝じゃない?脳疲労と自律神経に着目した新しいアプローチ

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【監修】

院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師

痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。

一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。

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本記事は、当院の施術に関する情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代行するものではありません。症状に関する診断や治療については、必ず専門の医療機関にご相談ください。当ブログの情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。