「一生懸命トレーニングしているのに、なぜか記録が伸び悩む」「いつも同じ場所ばかり痛くなる」——その原因、もしかしたら**無意識の「代償動作」**にあるかもしれません。
代償動作とは、**身体のどこか弱い部分や“サボっている”部分の仕事を、別の部分が無理に肩代わりしてしまう「かばう動き」**のことです。
この動きは、短期的には身体を動かす助けになりますが、長期的には燃費の悪い動きとなり、パフォーマンスを低下させ、予期せぬ怪我の引き金にもなります。
この記事では、あなたの身体に潜む「代償動作」に自分で気づき、改善への第一歩を踏み出すための具体的なセルフチェック法を、分かりやすくご紹介します。
なぜ「代償動作」は起こってしまうのか?3つの主な原因
私たちの身体は、とても賢く、そして正直です。何かしらの不都合が起きると、それを補うために無意識のうちに動きを調整します。それが代償動作の始まりです。
原因1:過去の怪我や痛みの記憶
過去に痛めた足首をかばう、捻挫の記憶から踏み込みが浅くなるなど、脳が痛みを避けるための動きを記憶してしまっている。
原因2:特定の筋肉の“サボり癖”
デスクワークで本来働くべきお尻の筋肉が“サボり筋”になり、代わりに腰の筋肉が頑張りすぎて腰痛になる、など。
原因3:日常生活の無意識な癖
いつも同じ側の肩にバッグをかける、足を組む、頬杖をつくといった、日々の小さな癖の積み重ね。
代償動作が引き起こす、ドミノ倒しのような悪影響
代償動作を放置しておくことは、車のタイヤが一つだけ空気圧が低いまま走り続けるようなものです。だんだんと、車体全体に不調が広がっていきます。
パフォーマンスの低下
本来使うべき大きな筋肉が使えず、小さな筋肉で代償するため、パワーやスピードが出にくくなります。動きの効率が悪く、すぐに疲れてしまう「燃費の悪い身体」になります。
予期せぬ部位の痛みや怪我
肩代わりして頑張りすぎている筋肉や関節は、常にオーバーワーク状態。その結果、肩こりや腰痛、膝の痛みなど、原因不明だと思っていた不調を引き起こします。
身体の見た目のアンバランス
左右の肩の高さが違う、ウエストのくびれが左右で違うなど、身体の見た目の非対称性として現れることもあります。
国の基本的な方針においても、安全な環境でスポーツを楽しみ、傷害を予防することの重要性が強調されています。特に、医学や科学の知見を活用して、一人ひとりの身体の状態に合わせた効果的なスポーツの実施が推奨されており、これは個々の身体の連動性を見ていく考え方と一致します。
[引用元:スポーツ庁「第3期スポーツ基本計画」]
あなたの身体は大丈夫?今すぐできる代償動作セルフチェック法
ここからは、ご自身の身体にどんな「かばう動き」の癖が隠れているか、簡単な動きでチェックしてみましょう。鏡の前や、スマートフォンで動画を撮りながら行うのがおすすめです。

チェック1:バンザイ動作で見る「肩と腰」の連動性
チェック方法
楽な姿勢で、壁に背中をつけて立ちます。かかと、お尻、背中、頭を壁につけましょう。
その状態から、両腕をゆっくりと「バンザイ」するように上げていきます。
こんな動きは要注意!
腰が壁から大きく離れてしまう
肩周りの柔軟性が足りないのを、腰を反らせることで代償しています。肩こりや腰痛の原因になりやすいタイプです。
肘が曲がってしまう、腕が上がりきらない
肩甲骨周りの筋肉がうまく使えていない可能性があります。
チェック2:片足立ちで見る「お尻と体幹」の安定性
チェック方法
両手を腰に当てて、まっすぐ立ちます。
片方の膝を90度に曲げて、ゆっくりと持ち上げ、その場で10秒キープします。
こんな動きは要注意!
上げた足と反対側の骨盤が、ガクッと下に落ちる
軸足のお尻の筋肉(中臀筋)が“サボり筋”になっており、体幹で支えきれていない証拠です。ランニング時の膝の痛みの原因にもなります。
上半身が大きくグラグラと揺れる
体幹全体の安定性が不足しているサインです。
チェック3:スクワットで見る「股関節と膝」の使い方
チェック方法
足を肩幅に開いて立ち、つま先は少しだけ外側に向けます。
両腕を前に伸ばし、お尻を後ろに引きながら、椅子に座るようにゆっくりと腰を落としていきます。
こんな動きは要注意!
腰を落とすときに、両膝が内側に入ってしまう(ニーイン)
股関節をうまく使えず、膝に大きな負担がかかる動きの癖です。ジャンプの着地などで怪我をするリスクが高いタイプです。
かかとが浮いてしまう
足首やふくらはぎの柔軟性が不足しているのを、他の部分で代償しようとしています。
代償動作に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 良い姿勢を意識すれば、代償動作は治りますか?
A1. 意識することは素晴らしい第一歩です。しかし、代償動作は無意識レベルで体に染みついているため、ただ意識するだけでは、別の部分が緊張してしまい、新たな代償動作を生むこともあります。根本的な原因である“サボり筋”を目覚めさせ、正しい動きを再学習することが重要です。
Q2. ストレッチだけではダメなのでしょうか?
A2. ストレッチは、硬くなった筋肉をほぐすのに非常に有効です。しかし、代償動作の原因が「筋肉のサボり癖」にある場合、ストレッチだけではサボっている筋肉を働かせることができません。ストレッチ(柔軟性)とトレーニング(安定性)をセットで行うのが理想的です。
Q3. 子供にも代償動作はありますか?
A3. はい、あります。特定のスポーツに早期から打ち込んでいるお子さんの場合、同じ動きの繰り返しによって筋肉のバランスが偏り、代償動作が癖になっていることがあります。子供のうちは身体が柔軟なため問題が出にくいですが、成長と共に怪我のリスクになることも。早めに正しい動きを身につけることは、将来の財産になります。
まとめ:身体からのサインに気づき、効率の良い動きを取り戻そう
代償動作は、いわばあなたの身体からの「ここがうまく使えていないよ」というメッセージです。セルフチェックで「あれ?」と思った方は、自分の身体と向き合う絶好のチャンスです。
頑張りすぎている筋肉を休ませ、“サボっている”筋肉にスイッチを入れてあげる。そうして身体全体のチームワークを取り戻すことで、あなたのパフォーマンスはもっと向上し、怪我の不安からも解放されるはずです。
▼身体全体のつながりから、根本的な原因を見つけたい方へ
今回のテーマである「代償動作」は、スポーツ障害の再発と非常に深く関わっています。なぜ怪我が繰り返されるのか、その全体像と本質的なアプローチについて、中心となるこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ合わせてお読みください。
→ 【スポーツ障害】なぜ、怪我は再発するのか?パフォーマンスを落とさないための本質的なアプローチとは
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痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。
一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。
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【免責事項】
本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。症状が改善しない、または悪化する場合には、速やかに専門の医療機関を受診してください。




