スポーツ選手を悩ます「疲労骨折」の原因と見分け方

練習中に特定の場所が痛み出し、休むと痛みが消える。筋肉痛かと思って練習を続けるうちに、どんどん痛みが強くなり、ついにはプレーが続けられなくなってしまう――。これは、スポーツ選手を悩ます「疲労骨折」の典型的なパターンです。

一度の大きなケガではないため見過ごされやすく、無理を重ねて重症化しやすいのが疲労骨折の怖いところです。この記事では、疲労骨折の根本的な原因から、見逃さないためのサイン、そして早期発見に役立つ超音波エコーの有用性まで、詳しく解説します。

疲労骨折を見分ける3つのサインと対処法

練習中に以下のような症状がみられたら、疲労骨折の可能性があります。

  1. 運動時のみ痛む: 運動を開始すると特定の場所が痛み、運動をやめると痛みが和らぐ、または消失する。

  2. 痛みが徐々に悪化: 当初は軽い痛みや違和感だったものが、練習を続けるうちに徐々に痛みの程度や持続時間が増していく。

  3. 押すと激しく痛む(圧痛): 痛む場所を指で押すと、ピンポイントで飛び上がるほどの鋭い痛みがある。

これらのサインに気づいたら、最も重要な対処法は**「原因となっている運動を直ちに中止し、専門家に相談すること」**です。

「ポキッと折れる」骨折との根本的な違い

疲労骨折は、一度の大きな力で骨が折れる通常の骨折(外傷性骨折)とは、発生のメカニズムが全く異なります。

  • 通常の骨折: 転倒や衝突など、一度に大きな外力が加わることで発生します。

  • 疲労骨折: 同じ場所に繰り返し小さな負荷(ストレス)がかかり続けることで、骨の修復が追いつかなくなり、骨に微細なひび割れが生じることで発生します。金属疲労と似た現象です。

疲労骨折の診断が難しい理由

疲労骨折は、初期段階では症状が筋肉痛や腱の痛みと似ているため、選手自身も指導者も「少し張りがあるだけ」と判断し、練習を継続してしまいがちです。

また、診断においても特有の難しさがあります。疲労骨折のごく初期段階では、骨の微細な損傷は非常に小さいため、骨全体の構造を写すレントゲン検査では変化として捉えられないことが少なくありません。レントゲン写真で明らかな異常(骨折線)が確認できるようになるには、通常、症状が出始めてから数週間かかる場合があるのです。

超音波エコーが捉える、疲労骨折の『初期サイン』

このようにレントゲン写真に変化が現れる前の、いわば「骨折の”たまご”」のような状態を捉えるのに非常に有効なのが、超音波エコーによる観察です。

【解説】健康な骨との比較で見る、疲労骨折の初期サイン

下の画像は、健康な骨の表面を超音波エコーで観察したものです。白く滑らかに写っている線が、正常な骨の表面(骨皮質)です。

疲労骨折の初期段階では、この正常な画像に2つの大きな変化が現れます。
まず、この白い線の上に、骨を覆う**「骨膜」が炎症を起こして黒っぽく厚く写ります。さらに、ドップラーという血流を観察する機能を使うと、その厚くなった骨膜の中に、修復のために集まった新生血管が「赤や青の点(血流信号)」として多数観察されます。**

この「骨膜の肥厚」と「血流の増加」こそが、レントゲンに写る前の、骨が発している重要なSOSサインなのです。

疲労骨折が起こりやすい部位とスポーツ種目

起こりやすい部位主なスポーツ種目
下腿(脛骨・腓骨)陸上(長距離、跳躍)、バスケットボール、バレーボール
足の甲(中足骨)陸上(長距離)、サッカー、ラグビー、バレエ
腰椎(腰椎分離症)野球、バレーボール、テニス、サッカー(体をひねる動作)
肋骨ゴルフ、野球(スイング動作)

疲労骨折の治療と競技復帰について

疲労骨折の治療の第一原則は、原因となった負荷を骨から取り除くこと、つまり**「スポーツ活動の休止(患部安静)」**です。
競技復帰までのプロセスは、専門家の管理のもと、痛みのない範囲での代替トレーニングから始め、段階的に負荷を上げていくことが不可欠です。焦りは禁物です。

この点について、専門的な医学情報サイトも以下のように述べています。

引用
疲労骨折の治療は、原因となっている活動を中止して、骨が治癒するまで待つことです。治癒には最長で6~8週間かかります。それまでは、原因となった活動や体重がかかる運動は控え、必要な場合は松葉杖を使用します。

出典:MSDマニュアル家庭版「足の疲労骨折」

疲労骨折に関するよくあるご質問(Q&A)

Q1. 痛み止めを飲んで練習を続けてもいいですか?
A1. 絶対に避けるべきです。痛み止めは一時的に痛みを感じなくさせるだけで、骨へのダメージは蓄積し続けます。結果として、より重症の骨折につながる危険性が非常に高いです。

Q2. 完全に休まないといけませんか?
A2. 骨折した部位に負担をかけない代替トレーニング(例:足の骨折なら、上半身の筋力トレーニングや、水中でのトレーニングなど)は可能な場合があります。ただし、必ず専門家の指導のもとで行ってください。

Q3. どれくらいの期間で競技に復帰できますか?
A3. 骨折の部位や重症度によりますが、一般的にはスポーツ活動の休止が4週間〜8週間程度、競技への完全復帰までには数ヶ月を要することが多いです。

Q4. 疲労骨折を予防するにはどうすればいいですか?
A4. オーバーユース(使いすぎ)が最大の原因です。練習量の適切な管理、ウォーミングアップとクールダウンの徹底、正しいフォームの習得、十分な栄養と休養、そして体に合っ-たシューズ選びなどが予防につながります。

まとめ:より詳しい骨折治療については

疲労骨折は、選手の努力や熱心さがあだとなって発生することが多い、非常につらいケガです。「おかしいな」と感じる初期の段階で勇気を持って休み、専門家に相談することが、重症化を防ぎ、より早い競技復帰への一番の近道です。

骨折全般の回復プロセスや、骨の修復をサポートする栄養素など、より網羅的な情報については、以下の記事で詳しく解説しています。

[骨折したら最初に読む記事|骨がつく期間の目安から生活の注意点まで網羅]

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【監修】

院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師

痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。

一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。

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本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。症状が改善しない、または悪化する場合には、速やかに専門の医療機関を受診してください。