骨折の固定中の生活マニュアル|かゆみ・お風呂・服装の悩み解決

骨折の治療で患部を固定されると、痛みだけでなく、日常生活の様々な不便さがストレスになるものです。

患者さん
「固定しているところが猛烈にかゆい」
「お風呂にどうやって入ればいいの?」
「服の着替えが大変…」

といった悩みは、経験した人でなければ分からないつらさがあります。

この記事では、骨折固定中の三大お悩みである「かゆみ」「お風呂」「服装」について、具体的な解決策と注意点を詳しく解説します。

固定中の3大お悩み別・解決策のポイント

骨折固定中の不便な生活を、少しでも快適に乗り切るための最も重要なポイントは以下の3つです。

  1. かゆみ対策: 患部を冷やすのが最も安全で効果的です。棒などで掻くのは皮膚を傷つけ、感染症の原因になるため絶対に避けてください。定期的な通院で皮膚の状態をチェックし、管理することが重要です。

  2. お風呂対策: 固定具は絶対に濡らさないことが原則です。ビニール袋や専用の防水カバーを活用し、シャワーで済ませるのが基本です。

  3. 服装の選び方: 前開きのシャツゆったりとした袖・裾の服を選ぶと、着脱が非常に楽になります。

なぜギプス固定ではなく『オーダーメイド固定』を選ぶのか?

一般的に骨折の固定というと、重くて取り外しのできない石膏ギプスを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、蛯原接骨院では、患者さんの回復を最適化するため、あえてギプス固定を選ばない理由があります。

その一つが、骨折のタイプによっては、ギプス固定中でも内部で骨が再びズレてしまう(再転位する)可能性があるからです。ギプスは一度固めると調整が難しく、受傷直後の腫れが引くにつれて内部に隙間が生まれ、再転位のリスクが高まることがあります。

また、完全なギプス固定は、皮膚トラブル(かゆみ、かぶれ)の原因になりやすい、関節が必要以上に硬くなってしまう(拘縮)、といったデメリットも少なくありません。

これらの理由から、当院では患者さん一人ひとりの骨折の状態や部位、ライフスタイルに合わせて、最適な素材で固定具をオーダーメイドします。これにより、定期的な状態観察と調整が可能となり、再転位のリスクを抑えながら、皮膚トラブルや過度な関節拘縮を防ぐことができるのです。

症状に合わせて使い分ける様々な固定具

  • 金属副子、アルフェンスシーネ: 患部に合わせて形を調整できる金属製の副木です。

  • プライトン、レナサーム: お湯で柔らかくなり、冷えると固まるプラスチック素材。指などの細かい部分の固定に適しています。

  • キャストライト: グラスファイバー製で非常に軽く、かつ強度も高い素材です。

通院での皮膚管理というメリット

オーダーメイドの固定具は、多くが着脱可能です。そのため、来院時には固定具を外し、超音波エコーで回復具合を観察すると同時に、皮膚の状態を清潔に保ち、かゆみなどのトラブルを直接管理できるという大きなメリットがあります。

【悩み別】日常生活の具体的な工夫と注意点

「かゆみ」への対処法

固定中のかゆみは非常につらいものですが、間違った対処は禁物です。

  • 絶対にやってはいけないこと: 菜箸や定規などを隙間から入れて掻く行為。皮膚を傷つけ、そこから細菌が入ると化膿や感染症を引き起こすリスクがあります。

  • 推奨される対処法: 固定具の上から、保冷剤や冷たいタオルなどで冷やすと、かゆみが和らぎます。ドライヤーの冷風を当てるのも一つの方法です。つらいかゆみは、通院時に遠慮なくご相談ください。

「お風呂」の入り方

固定具を濡らさないための工夫が必要です。

  1. 大きめのビニール袋で固定具全体を覆います。

  2. 固定具の上下(皮膚との境目)を、防水テープや輪ゴムで数カ所留めて、水の侵入を防ぎます。

  3. 湯船には浸からず、シャワー浴で済ませます。患部は浴槽の縁に乗せるなどして、濡れないように注意しましょう。

[腕の固定具にビニール袋をかぶせ、防水テープで留めている様子の写真]

「服装」の選び方

  • 腕の固定の場合: 前開きのシャツやカーディガン、袖口の広いドルマンスリーブなどが着脱しやすいです。

  • 足の固定の場合: 幅の広いスウェットパンツやジャージ、スカート、ワンピースなどが便利です。

注意すべき合併症「コンパートメント症候群」

固定が強すぎたり、腫れがひどくなったりすると、筋肉や神経が圧迫される危険な状態「コンパートメント症候群」に陥ることがあります。これは緊急の対応が必要なサインです。

引用
コンパートメント症候群が疑われる場合、以下の症状に注意し、直ちに医師の診察を受ける必要があります。

  • 激しい痛み: ケガの程度に見合わないほどの痛み、鎮痛薬が効かない痛み。

  • 感覚の異常: しびれ、感覚が鈍くなる。

  • 動きの問題: 患部を動かせない、力が入らない。

  • 見た目の変化: 皮膚が青白くなる、パンパンに腫れる。

出典:MSDマニュアル家庭版「コンパートメント症候群」

骨折固定中の生活に関するよくあるご質問(Q&A)

Q1. 固定具が緩んできた気がします。自分で調整してもいいですか?
A1. 絶対に自己判断で調整しないでください。骨折の回復には適切な固定圧が不可欠です。緩みや違和感がある場合は、すぐに来院してください。

Q2. 固定具をうっかり濡らしてしまいました。どうすればいいですか?
A2. 濡れたまま放置すると、皮膚がかぶれたり、不衛生になったりします。すぐに連絡して、適切な処置を受けてください。

Q3. 寝る時の姿勢で気をつけることはありますか?
A3. むくみを予防・軽減するために、クッションなどを利用して、患部を心臓より高い位置に保つのが理想です。

Q4. 固定をしたまま車の運転はできますか?
A4. 手足のいずれかを固定している場合、安全な運転操作ができないと判断され、法律違反になる可能性が非常に高いです。絶対に運転は避けてください。

まとめ:より詳しい骨折治療については

骨折固定中の生活は不便なことが多いですが、少しの工夫で快適さは大きく変わります。特に、当院のようなオーダーメイド固定と通院での管理は、かゆみや皮膚トラブルといったストレスを大幅に軽減できます。一人で悩まず、どんな些細なことでも専門家にご相談ください。

骨折の回復期間の目安や、部位別の注意点、リハビリテーションなど、骨折治療に関する網羅的な情報については、以下の記事で詳しく解説しています。

[骨折したら最初に読む記事|骨がつく期間の目安から生活の注意点まで網羅]

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【蛯原接骨院】

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    曜日午前午後
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    8:00~12:30休診
    休診休診
  • アクセス: JR常磐線「牛久駅」徒歩5分

  • 駐車場: 5台分有り

【監修】

院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師

痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。

一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。

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本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。症状が改善しない、または悪化する場合には、速やかに専門の医療機関を受診してください。