骨折後のリハビリテーションガイド|いつから何を始めるべき?

骨折治療において、ギプスが外れた瞬間は大きな節目ですが、決してゴールではありません。むしろ、そこからが「元の生活を取り戻す」ための本格的なリハビリテーションのスタートです。

固定期間中に硬くなった関節や衰えた筋力を放置すると、後遺症として痛みが残ったり、動きが悪くなったりする可能性があります。

この記事では、骨折後のリハビリテーションについて、**「いつから」「何を」「どのように」**始めるべきか、その全体像と各時期における重要なポイントを専門的な視点から解説します。

骨折後のリハビリを成功させる3つのフェーズ

骨折後のリハビリは、ケガの状態に合わせて大きく3つの段階(フェーズ)に分けて進めるのが基本です。

  1. 【フェーズ1】ギプス固定中のリハビリ(急性期): 患部は安静にしつつ、固定されていない関節(指など)を動かし、むくみや筋力低下を最小限に抑える時期。

  2. 【フェーズ2】ギプス除去直後のリハビリ(回復期): 専門家の指導のもと、硬くなった関節の動き(可動域)を取り戻し、低下した筋力を徐々に回復させていく最も重要な時期。

  3. 【フェーズ3】社会・スポーツ復帰に向けたリハビリ(機能改善期): 日常生活やスポーツ特有の、より複雑な動きを取り戻し、再発を予防するための最終段階。

なぜリハビリは必要なのか?放置するリスクとは

「痛みがなければ、リハビリはしなくても良いのでは?」と考える方もいますが、それは大きな誤解です。長期間の固定は、骨以外の組織に様々な悪影響を及ぼします。

  • 関節拘縮(かんせつこうしゅく): 動かさないでいると、関節を包む袋や靭帯が硬くなり、関節の動く範囲が著しく狭くなります。

  • 筋萎縮(きんいしゅく): 使われない筋肉は急速に痩せ細り、筋力が低下します。

  • 固有受容覚の低下: バランス感覚や、関節の位置を感じ取るセンサーの機能が鈍くなります。

これらの機能低下は、日常生活の質を落とすだけでなく、転倒や再受傷のリスクを高めます。リハビリテーションの目的について、専門的な論文では以下のように述べられています。

引用
骨折治療におけるリハビリテーションの目的は,骨癒合の獲得を阻害することなく,患肢・患部の機能障害を最小限にとどめ,受傷前の機能状態にできるだけ早く回復させることである.

出典:J-STAGE「骨折に対する効果的なリハビリテーションの展開

【フェーズ1】ギプス固定中のリハビリ(急性期)

この時期の目的は、患部の安静を保ちつつ、周辺機能の低下を最小限に食い止めることです。

具体的な内容

固定されていない関節を動かす

例えば、手首を骨折していても、指や肩は動かせます。痛みのない範囲で、指のグーパー運動や、肩・肘の曲げ伸ばしを行いましょう。これは、血行を促進してむくみを軽減し、関節が硬くなるのを防ぎます。

患部外トレーニング

ケガをしていない方の手足や、体幹のトレーニングを行うことも、全身の筋力維持に非常に有効です。

【フェーズ2】ギプス除去直後のリハビリ(回復期)

この時期の目的は、硬くなった関節の動きを取り戻し、低下した筋力を回復させることです。リハビリの中で最も重要な期間と言えます。

リハビリ開始時期の判断

リハビリをいつから始めるかは、骨の修復具合によって決まります。医療機関でのレントゲン検査による医師の診断に加え、接骨院では超音波エコーを用いて、レントゲンでは見えにくい仮骨(新しい骨)の形成状態などを詳細に観察します。これらの情報を基に、専門家が安全にリハビリを開始できる最適なタイミングを判断します。

具体的な内容

可動域訓練

硬くなった関節を、ゆっくりと動く範囲を広げていく訓練です。お風呂の中など、体が温まってリラックスしている状態で行うと効果的です。決して無理に、強く動かしてはいけません。

筋力増強訓練

ゴムチューブや軽い重りを使うなど、ごく軽い負荷から筋力トレーニングを開始します。専門家の指導のもと、正しいフォームで適切な回数を行うことが重要です。

【フェーズ3】社会・スポーツ復帰に向けたリハビリ(機能改善期)

この時期の目的は、日常生活やスポーツ特有の、より実践的で複雑な動きを取り戻すことです。

具体的な内容

固有受容覚トレーニング

バランスディスクの上に立つ、目を閉じて片足立ちをするなど、体のバランス感覚を再教育するトレーニングです。転倒予防や、スポーツでのパフォーマンス向上に不可欠です。

動作訓練

歩く、階段を上り下りする、物を持ち上げるといった日常動作や、各スポーツの特有の動き(投げる、跳ぶ、走るなど)を、正しいフォームで反復練習します。

骨折後のリハビリに関するよくあるご質問(Q&A)

Q1. リハビリは痛くてもやった方がいいですか?
A1. 自己判断で痛みを我慢して無理やり動かすのは禁物です。リハビリはある程度の痛みを伴うこともありますが、それは「心地よいストレッチ感」の範囲内です。鋭い痛みや、リハビリ後に痛みが悪化する場合は、やり方や強度が合っていない可能性があります。

Q2. 自己流のリハビリは危険ですか?
A2. 非常に危険です。骨の回復状態を無視した不適切なリハビリは、痛みを悪化させるだけでなく、再骨折のリスクもあります。必ず専門家の指導のもとで、段階的に進めてください。

Q3. リハビリはどのくらい続ければいいですか?
A3. 骨折の部位や重症度、年齢などによって大きく異なります。数週間で終わる場合もあれば、数ヶ月以上かかる場合もあります。「痛みがなくなったから終わり」ではなく、関節の動きや筋力が十分に回復するまで継続することが重要です。

Q4. 筋肉痛と、ケガの痛みはどう見分ければいいですか?
A4. 一般的に、筋肉痛は運動後、広範囲にじわっとした痛みとして現れ、数日で和らぎます。一方、ケガの痛みは、特定の場所に鋭く、動かすたびに再現されることが多いです。判断に迷う場合は、専門家に相談しましょう。

まとめ:より詳しい骨折治療については

骨折後のリハビリテーションは、単なる筋トレやストレッチではなく、失われた機能を取り戻し、後遺症を防ぐための専門的な「治療」の一環です。焦らず、専門家と二人三脚で、段階的に元の生活を取り戻していきましょう。

骨折の回復期間の目安や、部位別の注意点、日常生活の過ごし方など、骨折治療に関する網羅的な情報については、以下のピラーコンテンツ(中心記事)で詳しく解説しています。

[骨折したら最初に読む記事|骨がつく期間の目安から生活の注意点まで網羅]

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院長:蛯原 吉正(EBIHARA YOSHIMASA)
資格:柔道整復師

痛みのある箇所だけに対処するのではなく、なぜそこに痛みが生じているのか、その背景にある本当の原因を追究することを信条としています。

一人ひとりの身体の状態や生活習慣と真摯に向き合い、不調が再発しにくい身体づくりをサポートすること。そして、来院された方が不安なく、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをすることを目指しています。

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本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。症状が改善しない、または悪化する場合には、速やかに専門の医療機関を受診してください。