高齢者のコーレス骨折を防ぐために|今日から始める転倒予防策と骨を強くする生活習慣

高齢期を迎え、多くの方が「いつまでも自分の足で歩き、元気に過ごしたい」と願っています。 しかし、その願いを脅かすものの一つが、ふとした瞬間に起こる「転倒」と、それに伴う「骨折」です。

特に、転んだ際に手をついて起こる「コーレス骨折」は、高齢者にとって最も身近な骨折の一つです。 治療に時間がかかるだけでなく、片手が使えない不自由な生活は、心身ともに大きな負担となり、生活の質(QOL)を大きく低下させる原因にもなりかねません。

しかし、コーレス骨折は決して「運が悪かった」だけで起こるものではありません。 そのリスクは、日々の暮らしの中にある「転倒の原因」を取り除き、「骨を強くする習慣」を意識することで、大きく減らすことができるのです。

この記事では、ご自身や大切なご家族がコーレス骨折で辛い思いをしないために、今日から始められる具体的な予防策を2つの柱でご紹介します。

なぜ高齢者はコーレス骨折になりやすいのか?

予防策を知る前に、なぜ高齢になるとコーレス骨折のリスクが高まるのかを知っておきましょう。

骨密度の低下(骨粗しょう症)

加齢、特に女性は閉経後に骨がもろくなる「骨粗しょう症(こつそしょうしょう)」が進行しやすくなります。 骨がスカスカの状態になるため、若い頃なら何ともない軽い衝撃でも、簡単に骨折してしまいます。

身体機能の変化

筋力や瞬発力、バランス感覚が低下することで、つまずいた時にとっさに足が出なかったり、体を支えきれなかったりして、転倒しやすくなります。

この**「もろくなった骨」「転びやすい身体」**という2つの要因が重なることで、コーレス骨折のリスクが格段に高まるのです。

予防策の柱1:「転ばない」ための環境づくりと意識

転倒の多くは、実は屋外よりも住み慣れた自宅で発生しています。 まずは家の中の危険を見直すことから始めましょう。

屋内での転倒予防策

床の上の障害物をなくす

床に置きっぱなしの新聞紙や雑誌、脱ぎっぱなしのスリッパ、部屋を横切る電気コードは、最もつまずきやすい原因です。 常に整理整頓を心がけ、床には物を置かない習慣をつけましょう。

段差をなくす・分かりやすくする

部屋の敷居やカーペットの縁といったわずかな段差が危険です。 可能であればリフォームで段差を解消するのが理想ですが、段差部分に目立つ色のテープを貼るだけでも効果があります。

滑り止め対策を徹底する

浴室や脱衣所、玄関には滑り止めマットを敷きましょう。 キッチンなどで床が濡れた場合は、すぐに拭き取る習慣が大切です。

十分な明るさを確保する

足元が見えにくいと危険です。 特に夜中にトイレへ行く際の廊下や階段には、センサー付きの足元灯を設置すると安心です。

手すりを設置する

立ち座りの動作が多いトイレや、滑りやすい浴室、そして階段には手すりを設置しましょう。 「ちょっと掴まる場所」があるだけで、転倒のリスクは大きく減少します。

外出時の転倒予防策

自分に合った靴を選ぶ

かかとがしっかりしていて、靴底に滑り止めがついている、軽くて履き慣れた靴を選びましょう。 スリッパやサンダルでの外出は危険です。

杖やシルバーカーを積極的に使う

「まだ早い」とためらわずに、少しでも歩行に不安を感じたら、杖などの補助具を使いましょう。 正しい使い方をすれば、最も確実な転倒予防策の一つです。

時間に余裕を持って行動する

「急がなきゃ」という焦りは、足元への注意を散漫にします。 バス停や駅へ向かう際も、5分、10分早く家を出る習慣をつけましょう。

予防策の柱2:「骨折しない」ための丈夫な骨作り

たとえ転倒してしまっても、骨が丈夫であれば骨折に至らないケースも多くあります。「骨の健康」を意識した生活習慣を心がけましょう。

食事で骨を強くする

丈夫な骨は、特定の栄養素だけで作られるわけではありません。様々な栄養素がチームのように働くことで、強くしなやかな骨が維持されます。ここでは特に重要な栄養素をご紹介します。

① タンパク質(骨の土台を作る最も重要な材料)

骨というとカルシウムを思い浮かべますが、そのカルシウムを固めるでできています。鉄筋コンクリートの建物で例えるなら、タンパク質は「鉄筋」の部分です。土台となる鉄筋がしっかりしていないと、いくらセメント(カルシウム)を流し込んでも、もろく崩れやすい建物になってしまいます。丈夫な骨を作るためには、まずタンパク質をしっかり摂ることが何よりも重要です。土台(骨基質)の約半分は、コラーゲンというタンパク質

  • 多く含まれる食品:肉、魚、卵、大豆製品(豆腐、納豆など)

② カルシウム(骨の主成分)

タンパク質で作られた土台に沈着し、骨の硬さや密度を高める主役です。建物でいう「セメント」の役割を果たします。

  • 多く含まれる食品:牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、小魚、小松菜や水菜などの野菜

③ カルシウムの働きを助けるビタミン群

カルシウムを効率よく骨にするためには、以下のビタミンが不可欠です。

  • ビタミンD(カルシウムの吸収を助ける)
    食事から摂ったカルシウムが、腸で効率よく吸収されるのを助ける「案内役」です。

    多く含まれる食品:鮭やさんまなどの魚類、きのこ類、卵。また、1日に15分ほど日光に当たる「日光浴」も、体内でビタミンDを作るのに効果的です。

  • ビタミンK(骨の形成を促す)
    カルシウムが骨にしっかりと沈着するのを助ける「接着剤」のような役割を果たします。

    多く含まれる食品:納豆に特に豊富に含まれるほか、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜にも含まれています。

④ マグネシウム(骨の質を高めるミネラル)

カルシウムとともに骨を形成する重要なミネラルで、骨の弾力性やしなやかさを保つのに役立ちます。また、体内のカルシウム量を調整する働きも担っています。

  • 多く含まれる食品:アーモンドなどのナッツ類、ひじきやわかめなどの海藻類、玄米、ほうれん草など

これらの栄養素を特定の食品に偏ることなく、バランスの取れた食事でまんべんなく摂取することが、丈夫な骨作りの基本です。

運動で骨に刺激を与える

骨は、適度な負荷がかかることで、新しい骨を作る細胞が活発になり、強くなります。無理のない範囲で、継続できる運動を取り入れましょう。

ウォーキング

最も手軽で安全な運動です。景色を楽しみながら、少し大股でリズミカルに歩くことを意識してみましょう。

片足立ち

壁やテーブルに手をついて、片足で数秒〜数十秒立つ運動です。バランス感覚を養い、足の付け根の骨を強くする効果が期待できます。

かかと落とし

椅子や壁につかまり、ゆっくりとつま先立ちになった後、かかとを「ストン」と床に落とします。骨全体に刺激が伝わり、骨密度を高める効果があると言われています。

まとめ:小さな積み重ねが、未来の安心につながる

コーレス骨折の予防は、何か特別なことをするのではなく、日々の生活の中にある小さな危険を取り除き、健康的な習慣を一つひとつ積み重ねていくことに他なりません。

「これくらい大丈夫」という油断が、大きな怪我につながる可能性があります。ご自身のため、そしてご家族の安心のためにも、今日からできることを見つけて、ぜひ実践してみてください。

コーレス骨折全体の情報や、万が一怪我をしてしまった際の治療法については、こちらの総合案内記事もご覧ください。
→ 
【監修・柔道整復師】コーレス骨折の治療とリハビリ|手術以外の選択肢と後遺症を残さないための注意点

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