肘内障は、一般的には「肘が抜けた」「腕が抜けた」と言われるもので、主に未就学児に多く発生します。
肘内障が起きた際、肘ではなく肩や手首が痛いと訴えるお子さんも多くみられます。
当院では近隣の保育園・幼稚園からのご紹介もいただきます。
今回のブログでは、お母さんや幼稚園・保育園の先生方が、お子様が肘内障になった時に落ち着いて行動できるように肘内障についてご紹介いたします。
Contents
肘内障とは
肘内障は、別名 橈骨輪状靱帯外亜脱臼とも呼ばれ、下の図のように輪状靱帯から橈骨頭が外れかかった状態の事を言います。
上腕骨から尺骨が外れる大人の肘関節脱臼とは違います。
※肘内障には関節機能異常や関節反射ショックという説もあります。
日本手外科学会「手外科シリーズ 21」から引用
肘内障の好発年齢
未就学児に多い。まれに小学校低学年や大人に起きる場合もあり。
肘内障が発生する原因
発生原因の中で一番多くみられるのは、手を引っ張られたことによるものです。
肘内障が発生すると、大体は脱臼した腕を使おうとはせず、腕を垂れ下げた状態になります。まれに手を動かせる状態で来院するお子さんもいますが、やはり普段の使い方とは異なるようです。
過去には寝返りした際に外れた、雲梯にぶら下がって外れた、等の原因もあります。
お友達に手を引っ張られたり、大人が見ていない場合は原因がはっきりしない場合もあります。
以前「先生、肘が外れたから今から連れてくね」という電話をいただき、来院してみると「上腕骨顆上骨折」という肘の骨折だった場合がありました。
よく話を聞いてみると、お婆ちゃんが目をはなした時に歩行器と一緒に段差から落ちたとの事でした。
当院では、受傷原因がはっきりしない場合は超音波エコー検査をします。
肘内障の症状
肘内障が発生すると上肢を内旋(上肢を内側に捻った状態)し下垂した状態で動かそうとしません。
稀に手を少し動かしてくる子もいますが本来の使い方とは違ってきます。
痛みを訴える場所は肩や手首を痛がる子もいます。
腫れや皮下出血等は出ません。
来院時は下の写真のように泣いてくるお子さんがほとんどです。

※写真はイメージです。実際の患者様ではありません。
肘内障の整復
動かさない手は動く様にしなくてはいけません。
通常、下図のように整復すると、術者の左手の親指にクリック音「コリッ」とした感触を触れます。
整復音が触知できると腕を使うようになります。
当院では、なるべくお子さんが身構えないような状態で整復することを心がけています。(お子さんが構えて力が入ってしまう前に治すようにしています。)
日本手外科学会「手外科シリーズ 21」から引用
熊本県阿蘇で遭遇した肘内障
数年前に熊本の阿蘇に旅行に行った際に、休憩所で号泣している女の子がいました。
その子のお母さんが女の子の肘を、以前の記憶を元に必死に整復動作をしているようでした。
しかし、そうそううまく治ることもなく女の子は痛みのために号泣していたので、たまらずこちらから声をかけて整復したと言う事が有りました。
あの時のご両親のほっとした顔は今でも忘れません。
肘内障の実際の症例
肘内障の原因
お母さんがぐずっているお子さんの手を引っ張って発症。
お母さんが引っ張ると同時にお子さんが座り込んでしまったようです。
肘内障の症状
患肢を動かさず、患肢を触ろうとすると泣き声が強くなりました。
肘内障の整復
今回は通常の整復動作でクリック音を触知し整復終了となりました。
整復後、待合室で様子を見ていただき、手の使い方に異常がなければ、一日で通院終了となります。
肘内障でもすぐに入らない場合も有ります
肘内障のほとんどは、瞬時に整復され手が動くようになり患者様にも笑顔が戻ります。
まれに、強い外力がかかっての受傷であったり、発症してから時間が経過していたり、また患者様の緊張が強いと、その場では整復できない場合も有ります。
その場合は肘の関節を固定し数日通院していただきますが、徐々に患肢の機能は回復してきます。
日曜日や祝日・祭日にお子さんの肘が抜けてしまった場合も、御連絡下さい
以前、救急病院に行って肘内障の整復を受けたが入らず、病院からそのまま来院された方もいらっしゃいました。(その時は病院の公衆電話からのご連絡でした。)
当院は、自宅と併設している接骨院のため、深夜や早朝・休日でも肘内障の対処をしております。
いつでも遠慮なくご連絡ください。